米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)
世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
12月利上げ、ほぼ決定。
非農業部門雇用者数 11月 +21.1万人 市場予想 +20.0万人 前月 +29.8万人(上方修正)
失業率 11月 5.0% 市場予想 5.0% 前月 5.0%
U-6失業率 11月 9.9% 前月 9.8%
平均時給(前年比) 11月 +2.3% 市場予想 +2.3% 前月 +2.5%
■12月の利上げがほぼ決定
4日に発表された11月の米雇用統計は全般的に市場予想を上回るまたは同水準の好内容で、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げがほぼ決定的な状況となった。不透明感の払拭を好感した米国市場は、(前日にECBの追加緩和に失望して大きく下落していたという要因もあるが)ダウ平均が370ドル近い大幅高となった。
まず、非農業部門雇用者数は11月分が前月差21.1万人増と市場予想の20万人増を上回る堅調な伸びとなったことに加え、過去分についても10月分が27.1万人増→29.8万人増、9月分が13.7万人増→14.5万人増と計3.5万人上方修正された。マネックス証券では11月の非農業部門雇用者数について、前月差20万人増と予想していたがそれを上回る好内容だった(グラフ参照)。
失業率は5.0%で前月から横ばい、正社員を希望していながらやむを得ずパートタイマーとして働く人々を失業者にカウントして算出したU-6失業率は前月から0.1ポイント悪化した9.9%だった。本来はU-6失業率も改善していれば満点に近い雇用統計だったのかもしれないが、それは高望みすぎるのかもしれない。いずれにせよU-6失業率の小幅な悪化だけを取り上げて利上げの先延ばし材料とすることは考えにくい。
また、平均時給は前年比2.3%の上昇と市場予想と一致した。前月の2.5%の上昇からは伸びが鈍った形だが、2010年以降の約5年間の中で単月で3番目に高い伸びを示しており、賃金上昇率の基調の高まりは継続しているようだ。こちらも及第点以上の結果だったと言えるだろう。
さらに、イエレンFRB議長が重視するとされる9つの労働関連指標、通称「イエレンダッシュボード」にも入っている「失業者に占める27週以上の長期にわたる長期失業者の割合」は、25.7%と前月から1.1%改善し、2010年以降で最低となった(グラフ参照)。
これまで示してきたように、11月分の雇用統計は労働市場の改善が継続していることを改めて示す好内容だった。イエレンFRB議長以下FRBの主流派たちは繰り返し、「経済指標に異変がなければ年内に利上げを実施し、その後の利上げペースは極めてゆっくりとする」というメッセージを送り続けてきた。
10月分・11月分の雇用統計がいずれも極めて堅調だった以上、12月のFOMCで利上げを実施することは決定的となった。今後の注目は、FRBが実施する利上げのペースに移っていく。
今後の市場見通しについては、過去にFRBが利上げを行った際に株式市場や為替市場がどのように推移したかをご紹介しながら次回以降のレポートでお示ししたい。
■用語解説
雇用統計(米国)
米政府による雇用環境を調査した統計。発表される統計のなかでも、失業率(働く意欲がある人口に占める失業者の割合)と非農業部門雇用者数変化(農業従事者を除いた雇用者数の増減)が市場で注目されやすい。通常は月初の金曜日に前月分が公表される。
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