米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)
世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
期待が高すぎたFOMC
連邦公開市場委員会(FOMC)
■FOMCは金融政策の現状維持を決定
日本時間28日の午前4時に連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が公表され、市場の予想通り金融政策は現状維持となった。注目されていた声明文の内容は、タカ派的というほどではないが、利上げペースの鈍化を示唆してほしい市場の期待を満たさず、ダウ平均は発表後に大きく下落した(グラフ参照)。筆者は前回のレポートでハト派的な声明となるのではないかと予想していたが、まったく外れてしまった。本レポートでは、声明文の前回からの変化から読み取れるFRBの姿勢をご紹介したい。
■声明文の主な変化
まず、声明文の冒頭で「昨年末に経済成長が鈍化した(even as economic growth slowed late last year)」という表現が使われた。「FOMCは12月の経済指標の鈍化を認識しているよ」というシグナルである。また、第2パラグラフの最後に、「委員会は世界経済と金融市場の動向を注視しており、それらが労働市場やインフレ率、リスクバランスの予想に与える影響を評価する。(The Committee is closely monitoring global economic and financial developments and is assessing their implications for the labor market and inflation, and for the balance of risks to the outlook.)」と記載された。これらの記載は、今後マーケットや米国・世界経済がさらなる混乱に陥れば、利上げを休止する可能性を示唆したものだろう。
このように、声明文には一定程度足元のマーケットの混乱に配慮した文言が追加された。ただ、利上げペースの鈍化を明確に示唆するような文言が入らなかったことが市場の失望を招いたとみられる。さらに、第1パラグラフの最後に「マーケットベースの将来のインフレ率を示す指標はさらに低下したが、調査に基づいた長期的なインフレ期待を示す指標はこの数ヶ月あまり変わっていない。」と記載され、インフレ期待の低下というFRBが最も避けたい事態には陥っていないとの認識を示した。経済指標やマーケットの弱さを認識しているが、それほど悲観的になってはいないFRBの姿勢が窺える。
今回の声明文では3月のFOMCでの利上げ可能性が残された。ただ、筆者は利上げに踏み切る可能性は非常に低いと考えている。理由は前回のレポートでも記したように、米国経済があまり芳しくないからである。声明文の冒頭に「12月に経済成長が鈍化した」とFRB自身が記載する状況である。3月までにこのような状況が大きく改善する見込みは薄く、FRBは様子見する可能性が高いのではないか。
このように声明文を精査すると、FRBが利上げを強行していく姿勢を示すようなタカ派的なものではない。株価の急落は、筆者を含めマーケット関係者の期待が高すぎたということなのかもしれないが、筆者にはやや過剰な反応にも見える。
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