米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)

世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。

執筆者:マネックス証券 プロダクト部

雇用統計結果報告~全体として堅調も期待はずれだったある指標~

非農業部門雇用者数(前月差) 2月 +24.2万人 市場予想 +19.5万人 前月 +17.2万人(上方修正)
失業率 2月 4.9% 市場予想 4.9% 前月 4.9%
労働参加率  2月 62.9% 市場予想 62.8% 前月 62.7%
平均時給(前年比) 2月 +2.2% 市場予想 +2.2% 前月 +2.5%

■全体として堅調

4日に発表された2月分の雇用統計は、全体として堅調で労働市場の回復トレンドは継続していることが確認できる好内容だった。ただ、ある指標の伸びが案外だったことが特徴的だった。

2月の非農業部門雇用者数は 前月差24.2万人増と市場予想の19.5万人増を大幅に上回った。また、1月分が15.1万人増→17.2万人増に、12月分が26.2万人増→27.1万人増にそれぞれ上方修正された。失業率は前月から横ばいの4.9%で市場の予想と一致した。労働参加率は前月から0.2ポイント上昇の62.9%と昨年1月以来1年1ヵ月ぶりの水準まで回復した。

このように、米国の労働市場の回復が続いていることを確認させる堅調な結果だったといえる。ただ、グラフに示したように雇用統計発表後に大きなドル高トレンドは生まれなかった。おそらくその大きな理由の1つが平均時給の伸びが鈍化したことにある。

■平均時給は8ヶ月ぶりの低い伸びに

労働者の平均時給は前年比2.2%の上昇と前月の2.5%から伸びが低下し、市場予想の2.5%も下回った。小数点第2位まで見ると2.22%の上昇で、これは昨年6月の2.00%以来8ヶ月ぶりの低い伸びである。グラフに示したように足元では平均時給の伸びが顕著で、給与の伸びは将来のインフレ圧力となることからFRBによる利上げの根拠の1つとなっていた。しかしここへきて給与の伸びが鈍化したとなれば、利上げがまたしても遠のく可能性が出てきたわけである。

ただ、単月の平均時給の伸びを持って利上げが遠のいたとみるのは時期尚早に過ぎると筆者には思える。グラフにもあるようにこれまでにも単月のブレというのはたびたび見られたし、平均時給以外の指標は労働市場の堅調な回復を示唆している。むしろ労働参加率の上昇や非農業部門雇用者数の増加からFRBが労働市場の回復に自信を深める可能性もあるだろう。

■次の利上げ時期は?

既にイエレンFRB議長やFRBの高官たちは米国経済の鈍化懸念や市場の混乱などを背景に3月のFOMC(連邦公開市場委員会)での利上げ見送りを示唆している。残る2016年のFOMCの開催スケジュールは、3月・4月・6月・7月・9月・11月・12月である。FOMCは3月・6月・9月・12月の開催時は、経済成長率や物価上昇率、政策金利などについてメンバーの今後の見通しが示されるため特に重要視されている。常識的に考えて、3月の利上げを見送る以上4月の利上げ可能性も高くはないとみられるが、6月となれば話は別だ。

市場の混乱が落ち着く、経済指標が改善することが前提になるのは当然だが、それらの条件が満たされればFRBが利上げに踏み切る可能性は十分にあると考えている。今後FRB高官たちは市場とコミュニケーションを図ることになるが、その中で6月利上げが排除されていないことが示される可能性がある。そうなれば当然米国株式市場にとってはマイナスだし、市場全体の波乱要因となる。米国株については高値追いよりも下値拾いというスタンスが望ましいと考えている。

用語解説

雇用統計(米国)
米政府による雇用環境を調査した統計。発表される統計のなかでも、失業率(働く意欲がある人口に占める失業者の割合)と非農業部門雇用者数変化(農業従事者を除いた雇用者数の増減)が市場で注目されやすい。通常は月初の金曜日に前月分が公表される。

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