米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)
世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
雇用統計直前レポート
ADP雇用統計(前月差) 3月 +20.0万人 市場予想 +19.5万人 前月 +20.5万人
(予想)非農業部門雇用者数 市場予想 +20.5万人 マネックス証券予想 +21.0万人
■変わらず堅調な米国労働市場
本日(4月1日)21時半に3月の米国雇用統計が発表される。サマータイムに移行したことに伴い、今月から発表時間が1時間早まっているので注意していただきたい。
FRBの2大責務が「雇用の最大化」と「物価の安定」である以上、今後も労働市場の動向が最重要判断材料の1つであることは変わらない。今後の利上げを巡って、一部のFRB高官からは「4月に利上げを検討する」という趣旨の発言も出ている。早期利上げを判断するうえで、今月の雇用統計も非常に注目度が高い。
雇用統計の先行指標である3月のADP雇用統計は、民間部門の雇用者数が前月から20.0万人の増加と市場予想を上回り、労働市場の堅調な改善の目安とされる20万人に達した(グラフ参照)。
また、一時的に増加傾向にあった新規失業保険申請件数は足元で減少(望ましい)傾向にあり(グラフ参照)、これらの指標から判断すると、米国の労働市場の回復トレンドは継続しているとみてよさそうだ。マネックス証券では非農業部門雇用者数について、市場予想とほぼ同水準の21万人程度ではないかと考えている。
■米国株上昇は企業景況感改善を織り込みか
本日は雇用統計とあわせてISM製造業景況感指数が発表される。同指標は2月まで5ヵ月連続で改善と悪化の境目となる50を下回っているが、3月分は6ヶ月ぶりの50超えを期待できそうだ。理由は先行指標である地区連銀の景況感指数の改善である。
グラフに示したように、3月の各地区連銀の景況感指数は軒並み前月から大きく改善した。景況感改善の要因としては、原油価格上昇とFRBの金融政策がハト派寄りにシフトしたことでドル高が一服したことが大きいとみられる。ダウ平均は昨年末の株価を回復するなど堅調に推移しているが、この上昇はこれらの企業景況感改善を織り込む形で上昇したものだろう。
■6月利上げが最有力もいまだ不透明
ブラードセントルイス連銀総裁、ロックハートアトランタ連銀総裁、ハーカーフィラデルフィア連銀総裁などの地区連銀総裁たちは、「4月のFOMCで利上げを議論する」という趣旨の発言を行った。ただ、実際には3月のFOMCから1ヶ月強しか時間が経過しておらず、米国景気の過熱を示唆するような指標も出ていない以上、4月のFOMCで利上げを決定する可能性は低いとみていいだろう。現時点ではその次のFOMCが開催される6月の利上げ決定が最有力とみられる。ただ、それについても今後発表される経済指標を踏まえてとなることは明らかで、不透明な状況である。
先日イエレンFRB議長は講演の中で世界経済や中国経済の鈍化リスクを配慮する姿勢をにじませるなど、どちらかといえばハト派的な姿勢を示した。このような主流派のハト派スタンスが続いている限り、リスク資産が大きく値崩れする可能性は低いと考えているが、今後発表される経済指標が好調で、そのスタンスに変化が出てきた場合には再び調整局面が訪れる可能性がある。現在の米国株に対しては高値追いではなく押し目を拾うことを意識すべきではないかと考えている。
■用語解説
雇用統計(米国)
米政府による雇用環境を調査した統計。発表される統計のなかでも、失業率(働く意欲がある人口に占める失業者の割合)と非農業部門雇用者数変化(農業従事者を除いた雇用者数の増減)が市場で注目されやすい。通常は月初の金曜日に前月分が公表される。
ISM景況感指数
ISM(Institute for Supply Management 供給管理協会)が発表する景気転換の先行指標である。供給管理協会が企業の担当者にアンケート調査を実施して作成しており、主要経済指標の中ではいち早く発表されることから景気の先行指標として重要視されている。数値が50を上回れば企業の景況感が好転、50を下回れば悪化していることを示す。製造業、非製造業それぞれ別に指標が発表される。
フィナンシャル・インテリジェンス部 益嶋 裕
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