米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)
世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
米国の個人消費は大丈夫か?
小売売上高(前月比) 3月 -0.3% 市場予想 +0.1% 前月 ±0%
小売売上高(自動車・ガソリン除く・前月比) 3月 +0.1% 市場予想 +0.3% 前月 +0.6%
■イマイチだった小売売上高
13日に発表された3月の小売売上高は、前月比マイナス0.3%とプラスを見込んでいた市場予想を下回った。また、変動の大きい自動車とガソリンを除いた売上高は、前月比プラス0.1%とプラスの伸びは確保したものの、市場予想を下回って前月から伸びが鈍化した(グラフ参照)。
小売売上高全体が前月比マイナスとなった理由は明確で、自動車関連の販売の伸びが大きく落ち込んだことにある。小売売上高のうち、乗用車関連は前月比マイナス2.3%、自動車部品は前月比マイナス2.1%とそれぞれ大きく落ち込んだ。これは3月の新車販売台数が大きく落ち込んだこととも整合的だ。3月の新車販売台数は年率換算1657万台と前月から100万台近く販売が落ち込み、約1年ぶりの低水準となった(グラフ参照)。
これらの指標からすると、米国GDPの7割を占めまさに米国経済の中心である個人消費が鈍化しているのではないかとの懸念が出てきてもおかしくない。
■その他の統計ではトレンドに変わりなし
結論から言えば、米国の個人消費について今のところ大きな心配をする必要はなさそうだ。先行性が高いため注目されるジョンソン・レッドブック発表の週間小売売上高は、グラフに示したように大きなトレンドの変化は起きていない。さらに、2月分までしか発表されていないが、実質個人消費支出の前年比の増加トレンドも崩れていない(それぞれグラフ参照)。
特に実質個人消費支出の鈍化は実体経済の悪化を意味する。グラフに示したように、ITバブル崩壊やリーマン・ショックの際は、実質個人消費支出が大幅に鈍化し、あわせて株価も大幅に下落した。実質個人消費支出の鈍化がもし起きたとすると懸念すべき事態だが、足元の実質個人消費支出は前年比3%近い増加を継続しており、今のところ個人消費鈍化を懸念する必要はなさそうだ。
このように、新車販売台数と小売売上高はともに冴えない内容だったものの、現時点で個人消費鈍化という最も懸念すべき事態は起きていないとみられる。今後も労働市場の回復を背景に、堅調な個人消費の伸びが継続し、米経済は堅調に推移すると考えている。
■用語解説
小売売上高
米政府による雇用環境を調査した統計。発表される統計のなかでも、失業率(働く意欲がある人口に占める失業者の割合)と非農業部門雇用者数変化(農業従事者を除いた雇用者数の増減)が市場で注目されやすい。通常は月初の金曜日に前月分が公表される。
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