米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)
世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
6月利上げはあるのか?~FOMC結果報告~
連邦公開市場委員会(FOMC)
■事前予想通り4月利上げは見送り
26日から27日にかけて開催された連邦公開市場委員会(FOMC)でFF金利の誘導目標の引き上げ(利上げ)は見送られた。ただしこの見送りは事前の市場予想通りで、注目点は声明文で今後の利上げについてどのような示唆が示されるかという点だった。もっと踏み込んで言えば、6月利上げの可能性が示唆されるかが最も大きな焦点だった。本レポートでは今回の声明文の内容から、6月利上げの行方についてご紹介したい。
■6月利上げの可能性は低下と判断
結論から言えば、筆者はこれまで6月利上げをメインシナリオとして考えていたが、今回の声明発表を受け6月利上げの可能性は大きく低下したと考えている。3月会合後の声明文から今回の会合の声明文では大きく以下3つの点が変更された。
(1)経済状況についての認識を下方修正
3月「経済活動は緩やかなペースで拡大」→4月「経済活動は鈍化したように思われる」
(2)労働市場の回復の強さに自信
「経済活動が鈍化する中でも労働市場はさらに改善した」
(3)世界経済や金融市場の混乱に対する配慮の文言を変更
3月「世界経済と金融動向は引き続きリスクとなる」→4月「世界経済や金融動向を引き続き注意深く監視する」
(2)(3)については実質的な上方修正であり、6月利上げに道を残すものである。そのため必ずしも6月利上げの可能性が完全になくなったわけではないと言える。ただ、(1)の経済活動の鈍化という表現は重い。原点に立ち返って考えるとそもそもFRBが緩やかな利上げを企図しているのは、米国経済の過熱を防ぐためである。その米国経済の成長が鈍化しており、その事実をFRBが認めている以上利上げを急ぐ理由はない。1-3月期のGDP成長率は本日発表されるが、アトランタ連銀が発表している先行予測は低迷を続けている。最新の予測はわずか0.6%である(グラフ参照)。
さらに、今回の声明文では「次回の会合で利上げを検討する」という2015年10月会合(つまり利上げが行われた12月会合の直前の会合)で記載された文言、またはそれに類する文言は一切付け加えられなかった。このことからもFRB内が早期利上げに傾いていないと判断できる。
筆者はこれまで力強い労働市場や、改善傾向を示しているその他の経済指標から、FRBはもっと強気な判断を示すのではないかと考えていた。そのため今回の声明文で「経済活動が鈍化している」という表現が盛り込まれたことは非常に意外感があった。これから6月のFOMCまでに発表される経済指標が強烈に強いものとならないかぎり、6月利上げが実施される可能性は低くなったと考えている。当然利上げ先送りの判断は世界経済や米国株式市場にとってプラスに働くだろう。一方でドル安円高材料となり追加金融緩和も見送られた日本株にとっては、上値を押さえる要因となってしまう可能性が高い。
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