米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)

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執筆者:マネックス証券 プロダクト部

雇用統計結果レポート~6月利上げの可能性はさらに低下~

非農業部門雇用者数(前月差)  4月 +16.0万人 市場予想 +20.0万人 前月 +20.8万人
失業率  4月 5.0% 市場予想 4.9% 前月 5.0%
平均時給(前年比)  4月 2.5% 市場予想 2.4% 前月 2.3%
労働参加率  4月 62.8% 市場予想 63.0% 前月 63.0%

全体的に冴えなかった雇用統計

6日に4月分の米雇用統計が発表された。一部に市場予想を上回って前月から改善する好内容の指標もあったものの、全体的にはやや冴えない結果だった。発表直前に107円ちょうど程度だったドル円はドル安円高が進み、一時106円40銭近くまで円高に振れた。ただし、ニューヨーク連銀のダドリー総裁が「年内2回の利上げ予想は妥当だ」との認識を示したことからドル高に巻き戻しが進み、結局発表前よりやや円安が進んだ。

4月の非農業部門雇用者数は前月差16.0万人増と市場予想の20.0万人増を下回って前月から伸びが鈍化した。さらに、3月分は21.5万人増→20.8万人増に、2月分は24.5万人増→23.3万人増にそれぞれ下方修正された(グラフ参照)。非農業部門雇用者数の伸び鈍化は先に発表されたADP雇用統計とも整合的な結果だったといえる。

ただ、前回のレポートでも記したように完全失業率に近い水準にあると指摘されている米国の労働市場で雇用者数の伸びが鈍化することは大きな驚きではない。ましてまだ単月のブレという可能性も捨てきれない状況だ。非農業部門雇用者数の下振れについて現時点で悲観する必要はないと考えている。

また、失業率は5.0%で前月から横ばいだった。市場予想では4.9%に低下すると予測されていた。失業率も悪化したわけではなく大きな問題があるわけではないが、失業率の悪化よりむしろ注目されたのは労働参加率の低下かもしれない。4月の労働参加率は62.8%と前月の63.0%から0.2ポイント低下した。生産年齢人口に占める労働人口の割合を示す労働参加率は、昨年9月の62.4%をボトムにこの数ヶ月継続的に上昇していた(グラフ参照)。労働参加率の高まりはこれまで職探しを諦めていた人々が労働市場の改善を受け労働意欲を取り戻して職探しを再開しているのではないかとの期待が高まっていた。4月の労働参加率の低下はこの期待に水を差す内容だったということになる。

賃金の上振れは好材料も6月利上げの可能性は依然低いまま

これまで示してきたように、冴えない内容が多かった4月分の雇用統計で数少ないポジティブ・サプライズだったのが労働者の賃金の伸びである。前年比2.5%の増加と市場予想の2.4%を上回って前月から伸びが高まった(グラフ参照)。ただ、前年比2.5%増(小数点第2位まで見ると2.49%増)は、昨年12月の2.64%増、昨年10月の2.56%増、今年1月の2.50%増に次いで過去1年間で4番目の伸びである。もちろんポジティブ・サプライズではあるのだが、極端に高い数値が出て賃金の伸びが急激に加速したような状況ではないことは注意したい。

改めて4月分の雇用統計を総括すると、「良い指標もあったが全体としては芳しくない」といったところだ。労働市場の失速が懸念されるような極端な悪い内容ではないが、FRBに利上げを急がせる好内容とも言えない。以前のレポートで記したように筆者は4月の連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文から、6月の利上げの可能性は低下したと判断した。今月の雇用統計はその考えをサポートするもので、依然として6月利上げの可能性は低いとみている。6月利上げ見送りとなれば米国経済・米国株にはプラスに働く一方でドル安バイアスになるとみられ、ドル円の上値は重いとみられる。日本株には厳しい状況が続きそうだ。

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