米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)

世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。

執筆者:マネックス証券 プロダクト部

雇用統計直前レポート~6月利上げの最大の判断材料~

ADP雇用統計(前月差)  5月 +17.3万人 市場予想 +17.3万人 前月 +16.6万人
(予想)非農業部門雇用者数(前月差) 5月 市場予想 +16.0万人 前月 +16.0万人 
(予想)平均時給 市場予想(前年比) 5月 市場予想 +2.5% 前月 +2.5%
ISM製造業景況感指数 5月 51.3 市場予想 50.3 前月 50.8

早期利上げの思惑高まる

本日(3日)5月分の米雇用統計が発表される。4月の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表されて以降、市場の早期利上げの思惑は高まっている。議事要旨では市場が想定していた以上にFOMCメンバーが早期利上げに傾いていることが明らかとなった。議事要旨では6月のFOMCで利上げを実施する条件として「労働市場の改善継続」「4-6月期の景気改善」「物価上昇のペース拡大」とが挙げられていた。労働市場の改善の最大の判断材料は雇用統計とみられ、いつも以上に雇用統計の結果に注目が集まっている。

2日に発表された先行指標であるADP雇用統計は民間部門の雇用者数が17.3万人の増加(グラフ参照)と、市場予想と一致した。完全失業率に近いと指摘される米国の労働市場で雇用者数の増加が加速するという状況にはないが、これまで同様堅調な回復を続けているといった印象だ。新規失業保険申請件数なども低位安定(望ましい)で、これらから判断すると米国の労働市場は堅調な改善を続けていると見てよさそうだ。

非農業部門雇用者数は前月と同様16万人の増加と予想されている。ただ、今月の発表は1点懸念材料がある。それは、通信大手のベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)のストライキである。労働統計局は雇用統計の調査期間中に大規模なストライキが発生した場合は公表しており、公表によれば調査期間中に35,100人のストライキが発生して就業していなかった。どの程度調査に影響を与えているか不明だし、ストライキは既に収束しており長期的な影響はないとみられるが、ネガティブ・サプライズになるリスク要因として考慮しておきたい。

また、雇用者数だけではなく平均時給の伸びにも引き続き注目だ。同指標は将来のインフレ圧力になるため元々注目度が高い。さらに、先週イエレンFRB議長は自身の講演の中で同指標の伸びの鈍さに触れた。講演で注目されたのは「数ヶ月以内の利上げが適切になる」という主旨の発言であったが、一方で「賃金の伸びが加速していないことは労働市場の緩みではないか」とも発言をしていた。市場予想では5月分は前年同月比2.5%の伸びと予想されているが、これを上回る伸びとなればイエレンFRB議長の懸念が緩和されることになり、市場は6月利上げの意識をかなり強めることになりそうだ(グラフ参照)。

予想比上振れも中身は良くないISM製造業指数

1日に発表されたISM製造業景況指数は51.3と前月の50.8から改善した。市場予想では50.3への悪化が予想されていたが、ポジティブサプライズとなった。ただ、ヘッドラインは改善したものの指数の中身を見ていくと内容はあまり良くない。

ISM製造業指数のヘッドラインは、「新規受注」「生産」「雇用」「在庫」「入荷遅延」の5項目の単純平均で計算されている。それぞれ見ていくと、「新規受注(55.8→55.7)」「生産(54.2→52.6)」「雇用(49.2→49.2)」」「在庫(45.5→45)」「入荷遅延(49.1→54.1)」と前月から改善したのは「入荷遅延」のみで、その改善幅が5ポイントと大きかったためにヘッドラインを押し上げたということだ(グラフ参照)。その他の項目は大幅に悪化したわけではなく取り立ててネガティブな内容というわけではないが、少なくとも米国製造業の景況感が加速している状況にはなさそうだ。

筆者はこれまで利上げは早くても9月ではないかと考え、レポートでもそのように記してきた。もちろん雇用統計の結果次第という側面が大きいが、現時点では必ずしも6月利上げの可能性が高いとは考えていない。6月23日に控えている英国の国民投票を見極めたいとの思惑も働くであろうし、何より米国経済全体は強い指標弱い指標まちまちで過熱という状況にはない。昨年の利上げがそうだったように、6月利上げは見送って声明文に近いうちに利上げを実施するというニュアンスを盛り込み7月または9月に利上げを実施するのではないかとみている。雇用統計の結果の影響は次回のレポートで記したい。

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