米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)

世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。

執筆者:マネックス証券 プロダクト部

雇用統計結果報告レポート

非農業部門雇用者数(前月差) 6月 +28.7万人 市場予想 +18.0万人  前月 +1.1万人
失業率 6月 4.9% 市場予想 4.8%  前月 4.7%
平均時給 市場予想(前年比) 6月 +2.6%  市場予想 +2.5%  前月 +2.5%

非農業部門雇用者数はポジティブ・サプライズも悪かった5月分がさらに下方修正

8日に発表された雇用統計で、6月の非農業部門雇用者数は前月から28.7万人の増加と市場予想の18万人の増加を大きく上回るポジティブ・サプライズとなった。また、4月分が12.3万人→14.4万人へと上方修正された一方で、元々3.8万人の増加と低調だった5月分が1.1万人増へさらに下方修正された。また、失業率は4.9%と前月から0.2%上昇(悪化)した。ただ、失業率の悪化は労働参加率の上昇を伴ってのもので大きな心配はないとみられる。

労働者の平均時給は、前年比2.6%の上昇で伸び率は昨年12月以来の高水準だった。昨年後半以降賃金の伸びの基調は徐々に高まっている(グラフ参照)。

6月分の非農業部門雇用者数は上振れ等を受け、市場の早期利上げ期待は若干ではあるが高まったようだ。CMEグループが発表しているフェデラルファンド・レートの先物価格から逆算した各回の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ可能性は、9月以降のFOMCでの利上げ可能性が雇用統計の発表前からやや上昇した(表参照)。



ただ、マーケットのダイレクトな反応は早期利上げを織り込みにいったものではなかった。発表直後こそ米2年債利回りは急上昇したもののすぐに発表前の水準まで低下した。また、発表前に100円40銭程度だったドル円は一時101円台前半までドル高円安に振れたものの、まもなく100円ちょうど程度まで円高に振れ結局その後発表前の水準に戻った(グラフ参照)。

確かに6月の非農業部門雇用者数はポジティブ・サプライズだったが、4-6月の3ヶ月の平均で見ると雇用者の伸びは14.7万人に過ぎない。1-3月の平均は19.6万人であるから、5万人近くペースが鈍っていることになる。6月分の雇用統計で労働市場に対する過度の懸念は後退したとみられるが、それでもFRBが利上げに踏み出すには物足りないというのが市場の見方かもしれない。

年内利上げの可能性はあり~FRB高官の発言に注目~

このように市場では12月の利上げさえ見込む向きは少数派だが、その見方はやや極端ではないか。前回のレポートで記したように足元の経済指標からは、「好調な企業景況感」「堅調な個人消費」「2%台半ばと予想される経済成長率」など米国経済の堅調さが窺える。雇用者数の伸びがやや鈍化しているのは事実だが、それは当初より想定されていたことであるし、将来のインフレ圧力となる労働者の平均時給は上昇している。

イエレンFRB議長は昨年末の議会証言の際に、「毎月10万人弱の雇用ペースが確保できれば新たに労働力として加わる人に職が提供でき、それ以上の伸びとなれば失業者や求職を断念している人を吸収する助けとなる」という主旨の発言を行っている。上述したように4-6月の雇用者数の伸びの平均は約14.7万人で、議長の基準をクリアしている。夏場以降も雇用者数の同水準の伸びが継続し、米経済が現在のペースで順調に推移すれば、有事の際の緩和手段をできるだけ確保しておきたいとみられるFRBが12月利上げに動いても不思議はないと考える。

FRBの政策スタンスを見極めるうえで注目されるのが、FRB高官の今回の雇用統計を受けての発言である。一時期は早期利上げに傾いていたFRB高官たちは、5月の冴えない雇用統計をきっかけに大きくハト派的スタンスに変化した。今回のまずまず堅調な雇用統計を受け、再びややタカ派的に戻るのかそれともハト派スタンスが継続するのか注目したい。直近で主な発言予定は以下のとおりである。

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