米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)
世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。
執筆者:マネックス証券 プロダクト部
雇用統計結果報告レポート
非農業部門雇用者数(前月差) 7月 +25.5万人 市場予想 +18.0万人 前月 +29.2万人
失業率 7月 4.9% 市場予想 4.8% 前月 4.9%
平均時給 市場予想(前年比) 7月 +2.6% 市場予想 +2.6% 前月 +2.6%
■全般に堅調な雇用統計
5日に発表された雇用統計は、全般に堅調な内容で米国労働市場の改善が続いていることを印象づけた。7月の非農業部門雇用者数は前月から25.5万人増と市場予想の18.0万人増を大きく上回った。また、6月分が+28.7万人→+29.2万人、5月分が+1.1万人→+2.4万人にそれぞれ上方修正された。失業率は4.9%と前月から横ばいだった(グラフ参照)。年初から7月分までの非農業部門雇用者数の伸びは平均18.6万人と20万人をやや下回るものの堅調と言える水準で、米労働市場の改善トレンドは継続しているとみてよさそうだ。
非農業部門雇用者数以外の指標も概ね堅調だった。将来のインフレ圧力となる平均時給は前年比2.6%の上昇と前月と同水準で、市場予想と一致した(グラフ参照)。また、労働参加率は前月から0.1ポイント上昇して62.8%となった。労働参加率は昨年9月に62.4%まで低下した後、一本調子ではないものの上昇傾向にある(グラフ参照)。
このように堅調だった雇用統計を受け、マーケットは素直に金利上昇・ドル高で反応した。発表前に0.64%程度で推移していた米2年債利回りは0.7%程度まで、101円近辺で推移していたドル円は102円程度まで上昇した(グラフ参照)。
■9月利上げの可能性も完全に排除はできない
こうしたマーケットの反応は、労働市場の改善を受け追加利上げの可能性が高まったことに対する素直な反応だろう。堅調な雇用統計やその他の好調な経済指標を受け、一時期よりも市場の早期利上げ観測は高まっている。CMEグループが発表しているフェデラルファンド・レートの先物価格から逆算した各回の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ可能性は、9月会合で15%、12月会合では40%超まで高まった。6月の雇用統計後には9月は5.9%、12月でも20%強に過ぎなかった(表参照)。
筆者は以前から12月に利上げが実施されるのではないかと考えているが、9月の利上げ可能性も完全には排除できない。今年の年初にフィッシャーFRB副議長は「今年4回の利上げが妥当である」という趣旨の発言を行った。FRBの強気な姿勢がハト派に傾いた最大の理由は、米国労働市場に回復鈍化のリスクがあるとみられたためだ。そのリスクが完全には排除できないまでも、だいぶ後退していることを考えれば9月に利上げを実施しておこうとの判断に傾く可能性も否定できない。カンザスシティ連銀のジョージ総裁が7月のFOMCで利上げを行うべきだと主張したように、徐々にFOMCメンバーは米経済への楽観的な見方を強めている可能性もある。慎重なイエレンFRB議長はBrexitの影響等を見極めるため、辛抱強くもうしばらく利上げを見送るというのがメインシナリオではあるが、サプライズの9月利上げにも注意をはらいたい。次回のFOMCは9月20・21日に開催される。
(※)印刷用PDFはこちらよりダウンロードいただけます。