米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)

世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。

執筆者:マネックス証券 プロダクト部

判断を迷わせる微妙な雇用統計

非農業部門雇用者数(前月差) 8月 +15.1万人 市場予想 +18.0万人  前月 +27.5万人 
失業率 8月 4.9% 市場予想 4.8%  前月 4.9%
平均時給(前年比) 8月 +2.4%  市場予想 +2.5%  前月 +2.7%
労働参加率 8月 62.8%  前月 62.8%
U-6失業率 8月 9.7% 前月 9.7%
失業者に占める長期失業者の割合 8月 26.1% 前月 26.6%

全般にやや弱めも利上げが大きく遠のいたほどではない微妙な雇用統計

2日に発表された雇用統計は、全般的に前月から横ばいまたは悪化して市場予想をやや下回る微妙な内容だった。何が微妙かといえば9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが行われるかが微妙ということだ。

まず、非農業部門雇用者数は8月分が前月差15.1万人増と前月から伸びが低下し市場予想の18.0万人増を下回った。7月分は25.5万人増→27.5万人増と上方修正された一方で6月分は29.2万人増→27.1万人増と下方修正され、両月を合わせるとほぼ横ばいだった。6-8月の3ヶ月間の雇用者数の伸びの平均は23.2万人、1-8月の平均は18.1万人となった。また、失業率は4.9%と前月から横ばいで、4.8%に改善すると見込んでいた市場予想を下回った(グラフ参照)。

詳細は後述するが、もちろん8月の非農業部門雇用者数の伸びは15.1万人と前月から伸びが大きく低下し今年に入ってからの平均も下回っているわけで、非常に良好と言えるものではない。ただ、5月分はわずか2.4万人増に終わったがその翌月の6月分は27.1万人増と大幅に改善するようなそもそも非常にブレが大きい指標なのだ。これをもって9月の利上げ実施可能性が大きく低下したかというとそこまで悪い水準と言い切ることはできないだろう。

非農業部門雇用者数や失業率と並んで市場の注目度の高い平均時給の伸びもやや弱かった。8月は前年比2.4%増と市場予想の2.5%増を下回った。なお、7月分は速報値の2.6%増から2.7%増に上方修正された。労働参加率は62.8%と前月から横ばいだった(グラフ参照)。

さらにイエレンFRB議長が重視しているとされるその他の指標も見ていこう。本来は正社員として働きたいがやむを得ずパートタイマーとして働く人々を失業者にカウントした広義の失業率であるU-6失業率は、9.7%と前月から横ばいだった。また、失業者の中で27週以上の長期にわたって失業状態にある人の割合は26.1%と前月の26.6%からやや改善した(グラフ参照)。

これまで見てきたように8月の雇用統計は全般的に「現状維持からやや悪化」と言った内容だった。もう一段内容が悪ければ9月利上げは見送り、反対にもう少し内容が良ければ自信を持って9月利上げへと傾きやすかったとみられるが、非常に判断に迷う極めて「微妙な」結果だった。雇用統計発表後のマーケットの反応からは、市場も判断に迷っていることが窺える。

市場の反応

まず、ダイレクトに市場の利上げ見通しを反映するとされる米2年債利回りは雇用統計の発表直後に急低下した。これはおそらく非農業部門雇用者数や平均時給の下振れなどに反応し、当初市場が「9月利上げ見送り」に傾いたということだろう。だが、これまで紹介してきたように様々な指標を見ていくとFOMCが9月利上げを見送ると自信を持って判断できるほど悪い内容ではなかった。そうすると米2年債利回りは急速に値を戻し、結局ほぼ発表前と変わらない水準で取引を終えた(グラフ参照)。

また、発表前に103円50銭程度で推移していたドル円は、発表直後に102円80銭程度まで円高に振れたが2年債利回り同様に急速に値を戻すとまもなく一時104円30銭程度まで円安に振れ、結局103円90銭程度と発表前より円安に振れて取引を終えている(グラフ参照)。

どちらかと言えば9月利上げの可能性がやや高いか

繰り返しになるが、9月の利上げ実施は非常に微妙な情勢だ。FOMCメンバーがどちらの判断に傾いても大きな驚きはない。ただ、どちらかと言えば9月のFOMCで利上げが決定される可能性がやや高いと考えている。

その理由は昨年12月のFOMCで利上げを決定した際から足元の経済指標が改善していることである。以下の表に示したのは米経済指標の中で特に重要視されているものだ(表の中でISM非製造業指数と小売売上高は今からFOMCまでに最新の数値が発表されるためクエスチョンマークとしている)。

この表をみると非農業部門雇用者数を除けば昨年の利上げ決定時点よりも概ね良好であることがわかる。労働市場の関連指標は米経済が完全雇用に近いとされていることもあって改善度合いはわずかではあるが、着実に改善したと見ることもできる。極めて慎重なイエレンFRBのことだから8月の雇用統計がやや不満の残る内容だったことを理由に利上げを見送る可能性を否定はできないが、米経済全体を俯瞰してみれば堅調な成長路線を歩んでいると見て差し支え無いだろう。それを持って9月利上げが実施されるというのがメインシナリオではないだろうか。

FOMC は9月20日から21日にかけて開催される。それまでに発表される主な経済指標は、ISM非製造業景況指数、労働市場情勢指数(LMCI)、米地区連銀報告(ベージュブック)、小売売上高、鉱工業生産、消費者物価指数(CPI)、ミシガン大学消費者信頼感指数といったところである。これらの指標の他に、今回の雇用統計を受けてFRBの高官たちがどのような発言を行うかによって市場は9月利上げの実施是非を織り込んでいくとみられる。

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