米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)

世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。

執筆者:マネックス証券 プロダクト部

雇用統計は労働市場の着実な引き締まり示す-12月利上げへ前進-

非農業部門雇用者数(前月差) 10月 +16.1万人 市場予想 +17.3万人  前月 +19.1万人 
失業率 10月 4.9% 市場予想 4.9%  前月 5.0%
平均時給 (前年比) 10月 +2.8% 市場予想 +2.6%  前月 +2.6%
労働参加率 10月 62.8%  前月 62.9%
U-6失業率 10月 9.5% 前月 9.7%

雇用統計は労働市場の着実な引き締まりを示す

4日に発表された米雇用統計は全体として労働市場の着実な引き締まりを示す、堅調な内容だった。10月の非農業部門雇用者数こそ市場予想の17.3万人増に対して16.1万人増とやや下回ったが、8月分が16.7万人→17.6万人、9月分が15.6万人→19.1万人と過去分が計4.4万人上方修正された(グラフ参照)。今年に入ってからの雇用者数の伸びの平均は18.0万人と堅調なペースを保っている。また、失業率は4.9%と前月の5.0%から改善した。これは労働参加率の低下(62.9%→62.8%)を伴うものだが、やむを得ずパートタイマーとして働く人々を失業者にカウントしたU-6失業率も9.5%と前月から0.2%改善し、金融危機前の2008年4月以来の低水準となった。引き続き米労働市場が完全雇用に近いことを示唆するものだろう。

そして今月さらに特筆的だったのが、平均時給の変化である。10月の平均時給は前年比2.8%の上昇と市場予想を上回って金融危機後の2009年6月以来の高い伸びを記録した(グラフ参照)。これまで賃金の伸びの鈍さは米労働市場に"緩み"が残っている証として指摘されてきた。労働市場の動向を何より重視するイエレンFRB議長にとって今回の高い賃金の伸びは朗報だろう。

これまで見てきたように今回の雇用統計は米労働市場のさらなる改善を示す堅調な内容だった。12月の利上げ実施に向けて前進したと言えようし、波乱材料がなければほぼ決まりと考えても差し支えないかもしれない。ただ、その波乱材料となるかもしれないのが周知の通り米大統領選である。

S&P500が9日続落

堅調な雇用統計の結果を受け一時は10ポイント超上昇する場面があった米国を代表する株価指数であるS&P500だが、取引終盤に失速し結局3ポイント安と9日続落で終えた。9日間の下げ幅は66ポイントほどで率にして約3%と大きな下げになっているわけではない。ただ同指数は1980年以降で最長の続落となっており、マーケットの"トランプ大統領誕生"への危惧を示唆しているとみられる。

以下の図は米国の各州でクリントン氏・トランプ氏それぞれどちらが優位にたっているかを示している。一見すると赤い色で示されたトランプ氏有利の州が多いが、米大統領選は各州に割り当てられた選挙人の獲得数で決まり、現状の予想では依然としてクリントン氏が優位にたっている。ただ、グレーで示された州は支持が拮抗しておりこれらの州の結果次第ではトランプ氏の大統領就任を否定することはできない。前回のレポートでも記したが、マーケットには英国のEU離脱(Brexit)の際の苦い記憶もあって、警戒ムードになっているということだろう。

ただ、7日の朝方になって、FBI長官が「クリントン氏の訴追を議会に求めない」と議会に書簡を送ったと報じられ、103円台前半だったドル円は104円前後まで円安に振れた。クリントン氏勝利の可能性が高まったことを好感したリスクオフからの巻き戻しの動きだろう。

ただ、予想に反してトランプ氏が勝利すれば、目先の不透明感拡大を嫌気してマーケットは一段のリスクオフとなり株安・円高が進む可能性が高い。一方でクリントン氏勝利となれば足元の調整からの巻き戻しでダウ平均は1万8000ドル半ば程度までの反発、ドル円は105円台までの戻りを期待できるかもしれない。結果判明は日本時間9日のお昼以降になると予想されている。

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