米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)

世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。

執筆者:マネックス証券 プロダクト部

12月利上げ実施可能性高まる-雇用統計結果報告-

非農業部門雇用者数(前月差) 11月 +17.8万人 市場予想 +18.0万人  前月 +16.1万人 
失業率 11月 4.6% 市場予想 4.9%  前月 4.9%
平均時給 (前年比) 11月 +2.5% 市場予想 +2.8%  前月 +2.8%
労働参加率 11月 62.7%  前月 62.8%
U-6失業率 11月 9.3% 前月 9.5%

■まずまず堅調な雇用統計

2日に発表された米雇用統計は12月利上げの確度を高めるまずまず堅調な内容だった。11月の非農業部門雇用者数は市場予想の18万人増に対して17.8万人増とほぼ予想に一致する水準だ。9月分が19.1万人→20.8万人に上方修正、10月分が16.1万人→14.2万人に下方修正と過去分はネットで0.2万人の下方修正となった(グラフ参照)。今年に入ってからの雇用者数の伸びの平均は18.0万人と堅調なペースを保っている。また、失業率は4.6%と前月の4.9%から0.3%の大幅改善となった。失業率は金融危機前の2007年8月以来の低水準だが、これは労働参加率の低下(62.8%→62.7%)を伴うものだ。職探しを諦めた人が一定数いることで見た目の失業率が改善した可能性が高く、実質的には見た目ほどの改善というわけではないだろう。なお、正社員を希望しながらやむを得ずパートタイマーとして働く人々を失業者にカウントしたU-6失業率も9.3%と前月の9.5%から低下している。

今月やや期待はずれだったのが労働者の平均時給だ。前年比2.5%の上昇と前月および市場予想の2.8%増を大きく下回った。前月比ではマイナス0.1%と昨年12月以来の前月比減少となった。雇用統計の発表後にややドル安基調となったのは平均時給の伸びが冴えなかったからかもしれない(グラフ参照)。ただ、平均時給の伸びも「悪い」というような水準ではない。労働市場の引き締まりは依然として継続しているとみてよいだろう。

■12月のFOMCで利上げ実施へ

これまで見てきたように11月分の雇用統計は満点というほどではなかったが、引き続き米労働市場が堅調に改善していることを示す内容だったと言える。これにより13日から14日にかけて開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決定される可能性は極めて高くなった。

前回11月のFOMCで利上げが見送られ、12月会合での利上げ実施が明文化されなかったのは米大統領選直前で大統領決定後に金融市場が混乱するリスクなどが考慮されたためだとみられる。ただ、既にイエレンFRB議長以下FRBの高官たちは12月のFOMCで利上げを実施したいとの意向を繰り返し示唆してきた。そしてトランプ氏の米大統領選勝利後に彼の経済政策への期待からダウ平均は連日のように史上最高値を更新している。こうなると「利上げを見送る理由がない」といったところだろう。

今後の焦点はもはや12月に利上げが行われるか否かではなく、利上げ実施は既定路線で問題はFOMC後に発表される来年以降の経済予測(プロジェクション)の内容だろう。プロジェクションでは経済成長率や金利見通しについてFOMCメンバーの予測が示される。前回のFOMC後のプロジェクションでは、2017年末のFF金利見通しの中央値は1.125%だった。これはFOMCメンバーの予測を総合すると2017年に2回の利上げが行われることを示唆している。昨年3月時点では1.875%、6月時点では1.625%と回を追うごとに下方修正されてきた(表参照)。

現時点では実現可能性に不透明な部分が大きいものの、トランプ氏が公約に掲げてきた減税や財政支出の拡大といった景気拡大に作用するとみられる経済政策がFOMCメンバーの心理に影響し12月のFOMCではこのFF金利見通しが9月時点より上方修正されるかもしれない。そうなれば、日米の金利差拡大が意識され一段のドル高が進行する可能性がある。そのシナリオが実現すれば円安が進行し日本株にとってはプラスに働くだろう。一方で政策金利の引き上げというのは当然景気引き締め的に作用するものだ。現在米国株は「トランプ・ラリー」に湧いているが、金融政策見通しの変更が利益確定売りの契機となる可能性もある。足元のS&P500の予想PERは18倍台とやや割高感が台頭している。FOMCをきっかけとした米国株の調整可能性には注意を払いたい。

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