米国マーケットの最前線

米国マーケットの最前線-経済動向から日本への影響まで-(随時更新)

世界一の規模を誇る米国マーケット。経済動向や注目トピックの解説、そして日本に与える影響まで踏み込んだ旬な情報をお届けいたします。

執筆者:マネックス証券 プロダクト部

2016年米国市場振り返り~来年に向け投資妙味がありそうな銘柄は~

ジェットコースターのようだった2016年

2016年の米国株の取引もいよいよ30日を残すのみとなった。今年のマーケットを振り返るとともに、来年に向け投資妙味がありそうな銘柄などを考えてみたい。

2016年の米国株式市場は前年12月に行われた9年半ぶりの利上げへの不安や、原油先物価格の大幅下落を受け年初から大きく下落して始まった。年初は年4回の利上げを実施すると息巻いていたフィッシャーFRB副議長も株価の低迷や米景気がやや停滞したことを受け次第にトーンダウンしていった。FRBの政策スタンス変更が市場の安心感を呼んだのか、1月から2月にかけて株価はボトムをつけその後は緩やかな上昇基調となった。途中英国のEU離脱決定(Brexit)などの波乱もあり、一時はマーケットが混乱した時期もあったが結果的に混乱は短期的に収束した。

その後11月に控えた大統領選への警戒感などから株価はやや頭打ちで推移していた。事前の世論調査ではクリントン候補の優勢が伝えられていたが、結果的にはトランプ氏が勝利した。メキシコとの国境に巨大な壁を作る、イスラム教徒の入国を禁止するといった過激な発言が警戒されたトランプ氏だが、徐々に減税や財政支出の拡大といった景気刺激的な政策がフォーカスされ、株価は大幅に上昇して主要株価指数は連日のように史上最高値を更新した。12月29日時点でダウ平均は節目の2万ドル到達目前といった状況だ。あと1営業日残しているものの、ほぼ年間リターンはプラスになったとみてよさそうだ。主要3指数の年間パフォーマンスは以下のとおりである。

なお、その他主要国の株価を以下の表で比較してみた。主要先進国の中では米国株がトップパフォーマーだが、今年はブラジルやロシアといった資源国の株価が大幅に上昇した。原油価格が底打ちしたことがその大きな要因の1つだろう。

2016年の米国経済振り返り、来年の展望

2016年、米国経済はどのように推移したのだろうか。全般にFEDの低金利政策に下支えされて堅調に推移したと総括して良いだろう。以下は主要な経済指標の2015年末と最新データの比較である。経済指標は概ね改善したことがわかる。ただ、物価上昇率は横ばいで加速の兆しを見せていない。

では、来年の米国経済にはどのような見通しを持てるだろうか。トランプ氏は減税・財政支出拡大・インフラ投資の強化といった景気刺激的な公約を掲げて大統領選に勝利した。この中で最も実現性が高いとみられているが減税である。大統領候補にトランプ氏を擁し、上院下院とも多数派となった共和党は元々「小さな政府」を志向している政党だ。財政支出の拡大やインフラ投資の強化はもしかすると議会との調整が難航し、実現不可または規模が小さくなるなどのリスクがある。一方で減税は共和党の方針とも合致するため、実現可能性が高いとみられている。そうなれば米国のGDPの7割を占める個人消費を刺激することになり来年の米国景気に追い風となることは間違いないだろう。また、法人税減税も実現すれば、企業の純利益を増加させる効果も出るとみられる。

こうした政策効果を織り込む形で経済協力開発機構(OECD)は2017年の米国および世界経済の成長率予想を上方修正した(表参照)。OECDは「積極的な財政政策が成長率をやや引き上げる(more active use of fiscal policy will raise growth modestly)」と記している。もちろん足元の米国や世界各国の株高はある程度こうした景気拡大を織り込んだものであろう。1月20日に正式に大統領に就任するトランプ氏がこの先どのような政策を実現できるかということが、一段の株高への鍵となる。

2017年に向けて投資妙味がありそうな銘柄は

このように景気拡大が期待される米国だが、投資妙味のありそうな銘柄はどのような銘柄だろうか。以下の表はS&P業種別指数について大統領選前の11月8日と12月29日を比較した騰落率を示したものだ。金利上昇や規制緩和への期待から金融が最も上昇している。一方で生活必需品や公益事業、ヘルスケア、情報技術などは出遅れていると言って良いだろう。

この中で特に注目したいのが「情報技術」つまりハイテクセクターだ。下記のチャートはダウ平均のほか、アップル、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、フェイスブックのハイテクセクターにおける時価総額上位5社の株価を大統領選直前の11月8日を100として示している。ダウ平均が8%ほど上昇している中で、アルファベット・アマゾン・フェイスブックの3社は大統領選前より株価が下落している。アップルとマイクロソフトの2社は大統領選前から株価は上昇しているものの、ダウ平均をアンダーパフォームしている。

ハイテクセクターの株価低迷の要因としてあげられるのが、金利上昇だろう。金利が上昇する局面では相対的に株式の価値が低下し、株価は下落圧力を受けやすい。その際に真っ先にそうした圧力を受けやすいのが元々バリュエーションが高い銘柄だ。アルファベット、アマゾン、フェイスブックの3社は元々成長期待が高いため特にPERが高い。米国の長期金利が大幅に上昇する中で、バリュエーションの高さが敬遠されて足元は売り圧力が強かったということだろう。

ただ、これらの銘柄の成長にそう簡単に陰りが出てくるとも思えない。金利上昇が一服し、改めてビジネスの成長性に目が向けば、株価の出遅れが注目されて改めて買いが入ってくる可能性がある。短期的にも中長期的にもこのハイテク各社の動向には注目していきたい。

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