シニア・マーケット・アナリスト 金山 敏之が日本企業の決算内容や業界分析等を分かりやすく解説します。
【決算メモ】安川電機(6506)
上期決算で過度な警戒感が後退
安川電機の株価は、20日の取引終了後に発表となった上期(4-6月期)決算を受けて過度な懸念が後退し、決算発表翌日(21日)に10%高と急伸しました。中国の景気減速懸念を背景にマーケット全体の調整が始まった8月からみると9月下旬に安川電機の株価は2割以上下落しましたが、設備投資関連で中国への依存度も高いだけに中国の景気減速懸念による業績悪化への警戒感が強かったといえます。
決算は過度な警戒感を大きく後退させることになりました。上期の売上高は前年同期比7%増の2079億円、営業利益は同27%増の190億円で、売上高は計画に1億円だけ届きませんでしたが、営業利益は計画を35億円上回って着地し、売上高、営業利益とも過去最高を更新しました。また、通期予想に関しても売上高を150億円引き下げ4200億円へと下方修正したものの、営業利益は前期比16%増の365億円を据え置きました。
大幅増益となった上期の営業利益の増益を分解してみると円安効果による押し上げが大きく、販売が数量ベースで減少となったことから、増収による利益貢献はマイナスに働きました。したがってトップラインがしっかりと伸びての大幅増益といったような力強さはありません。どちらかというとコストを抑えて堅実に利益を確保したといった印象を受ける上期決算だったといえます。
しかし、通期予想に関して中国市場の減速などを理由に売上高を150億円引き下げるなど中国に関しては減速感があるものの、大きく失速しているような印象はありません。例えば産業用ロボットでは自動車向けが減っている一方で、一般産業用向けの増加が自動車用の落ち込みをカバーしています。また、上期のACサーボでも数量の伸びはみられなかったものの、新製品への切り替えで収益性が向上しています。
通期の売上高は下方修正されましたが、経費の抑制でカバーし利益は期初計画を確保する見込みです。トップラインに若干の減速はあるものの、経費のコントロールでカバーできる範囲であることからすると8月以降の警戒は行き過ぎだったといえそうです。
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