シニア・マーケット・アナリスト 金山 敏之が日本企業の決算内容や業界分析等を分かりやすく解説します。
【決算メモ】日立(6501)
上期は大幅上振れながら下期は下方修正のオンパレード
上期業績予想の上方修正を好感して先月26日の株価が6%高と大きく上昇し、業績への期待が高まった日立ですが、中国の景気減速の影響が色濃く出た中間決算を受けて29日の株価は一時3%以上下落し一転失望となりました。
28日に発表した上期決算は9セクター中6セクターが増益で、営業利益は計画を2割以上も上回りました。しかし、上期の大幅上振れにも関わらず通期予想は据え置かれました。上期が上振れても保守的に通期予想を据え置くケースは多々ありますが、今回は業績下振れを避けるために設けていたバッファーと、コスト削減の一層の積み上げのお蔭で下方修正を免れたといった印象です。
上期の営業利益が540億円も上振れたにも関わらず、通期予想を据え置いたことで下期の営業利益の見通しは従来の4600億円から4060億円へと上期の上振れ分だけ引き下げられたことになります。セクター別にみると下方修正のオンパレードで、9セクターのうち中国の景気減速の影響などで社会・産業システムや建設機械、高機能材料など8セクターが下方修正となっています。
8セクターの下方修正額の合計は748億円に上り、一方で上方修正となった金融サービスの増額は15億円に止まりました。つまり、各セクターの下方修正額と上方修正の合計(733億円)が、下期の営業利益の下方修正額(540億円)を上回っていることから、業績下振れリスクを避けるために設けていたバッファーの一部を吐き出して調整したと考えられます。
構造改革によるコスト削減をさらに100億円積み上げるとしていることから、吐き出したバッファーは100億円程度とみられ、仮に業績下振れを吸収するバッファーがなければ下方修正に追い込まれたと考えることもできます。下期が総崩れとなっただけに来期の業績が心配となってきます。
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