シニア・マーケット・アナリスト 金山 敏之が日本企業の決算内容や業界分析等を分かりやすく解説します。
【決算メモ】東レ(3402)
上方修正のたびに保守的になる会社予想
東レが10日に発表した上期決算は営業利益が前年同期比46%増の751億円となり上期として過去最高となりました。縫製品や航空機向けの伸びで二桁の増収となった繊維と炭素繊維が5割を超す大幅な営業増益となり成長をけん引し、上期の営業利益は第1四半期に上方修正した金額を60億円余り上回って着地しています。
こうした上期実績を受けて東レは通期の業績予想を上方修正しました。営業利益を従来の1500億から1550億円へと引き上げています。上期予想を上方修正した第1四半期決算に続く上方修正ですが、実は会社予想を上方修正にするたびに反対に保守的な予想になっています。つまり強い実績が出るたびに見通しは弱くなっていくという状況です。
下期の見通しは本決算を発表した時点で860億円でした。しかし、第1四半期決算で上期を上方修正しながら通期予想を据え置いたことで、下期の予想は810億円へと50億円引き下げられました。そしてこの上期決算で通期予想を上方修正したものの、上期がそれ以上に上振れたことで下期の見通しはさらに引き下げられ800億円弱となりました。
これは中国の景気減速の影響が今後で出てくることを警戒してのことです。中国繊維子会社のトップラインの状況から上期にそんな気配はみられませんが、上方修正された通期予想は中国リスクを織り込んでより保守的となった業績予想だといえます。
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