シニア・マーケット・アナリスト 金山 敏之が日本企業の決算内容や業界分析等を分かりやすく解説します。
【決算メモ】トヨタ(7203)
営業利益据え置きだが、中身は大きく変化
5 日に第3 四半期決算を発表したトヨタは期初に発表した2 兆8000 億円という通期の営業利益予想を今回も据え置きました。しかし、その増減要因分析をみると同じ2 兆8000 億円でもその内容は期初と大きく異なります。例えば期初に450 億円の減益要因でみていた為替の影響は、ドル円を中心に想定より円安となったことで1850 億円の増益要因に転じています。また、期初に2650億円の増益要因とみていた原価改善の努力は3300 億円まで積み上がる見通しとなっています。
それにも関わらず通期予想が2 兆8000 億円に据え置かれているのは、販売面のプラス影響が期初の1600 億円から150 億円へと縮小するほか、経費の増加によるマイナス影響が2500 億円から4000 億円へと拡大するためです。つまりここからみえてくるのは、営業利益が計画の2 兆8000 億円に収まる範囲で研究開発や設備関係の経費を積極的に投入するトヨタの姿です。
経費の増加が目立つものの、第3 四半期までの進捗率82%と高いこともあってトヨタの営業利益は会社計画を上振れそうです。しかし、為替のプラス影響の拡大や原価改善により予算が浮く一方で、経費を積み増していることからトヨタの営業利益が、マーケットが意識している3 兆円程度にどれだけ近づけるかは、為替のプラス影響がさらに拡大するかどうかにかかっているといえます。第4 四半期3 カ月のドル円の想定レートは115 円です。足元の円高水準が続くと3 兆円が厳しくなるかもしれません。
(※)印刷用PDFはこちらよりダウンロードいただけます。