日本株銘柄フォーカス

マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー 益嶋 裕が様々な角度から焦点をあてて日本企業を紹介していきます。

益嶋 裕 プロフィール

会社四季報活用術その1  「連結事業」をチェックして企業のビジネスを把握

投資家のバイブル「会社四季報」の活用法

会社四季報を1度も見たことがないという投資家は少ないのではないでしょうか。それほど、日本において四季報の存在感は大きく、まさに個人投資家の「バイブル」とも呼べる存在です。ただ、四季報を見たことはあるけど、投資に活用する方法はよく知らないという方も多いようです。そこで、何回かの連載という形式で、会社四季報の活用法のポイントをご紹介していきます。第1回は「連結事業」についてです。

「連結事業」欄で企業のビジネスを把握する

上記の図は本日時点で最新の会社四季報から、飯野海運(9119)の「基礎/財務情報」欄を抜粋したものです。飯野海運はその名の通り海運ビジネスを行っている会社ですが、実はそれだけではありません。「連結事業」欄をご覧いただくと、「外航海運79(4)、内航近海海運9(7)、不動産12(35)【海外】71 <15・3>」という記載があります。これはどのような意味なのでしょうか。

まず、飯野海運が「外航海運」「内航近海海運」「不動産」の3つの事業を展開していることがわかります。この時点で、海運会社の飯野海運が実は不動産ビジネスも行っているという意外な(?)ことがわかります。次に、各事業の後についている数字の意味を追っていきましょう。数字は、事業名のすぐ後に出てくるものと、その後にカッコ書きされているものと2つ出てきます。それぞれ意味が大きく異なりますので、ご説明していきます。

カッコのついていない数字は、飯野海運の売上高全体に占める各事業の売上の割合を示しています。つまり、飯野海運は売上全体のうち「外航海運」で79%、「内航近海海運」で9%、「不動産」で12%稼いでいるということです。3つの数字を足すと、79+9+12で100になることがわかります。やはり飯野海運は売上のほとんど(88%)を海運事業で稼いでいるようです。

では次に、カッコがついている数字を確認します。「外航海運79(4)、内航近海海運9(7)、不動産12(35)」となっています。カッコ内の数字「(4)」「(7)」「(35)」となっていて、今度は足しあわせても100になりません。実はこのカッコ内の数字は、各事業の利益率を示しています。つまり、「外航海運」の利益率は4%、「内航近海海運」の利益率は9%、「不動産」の利益率は35%だということです。「不動産」事業が群を抜いて高い利益率であることがわかります。なお、ここでいう「利益」とは企業が決算短信の「セグメント別業績」で公表している利益であり、多くの場合は「営業利益」ですが「経常利益」などを採用している企業もあります。

 それでは改めて、各事業の売上・利益を整理してみましょう。理解しやすいように、仮に飯野海運の売上高が100億円であるとしてみます。そうすると売上は、

<売上>
外航海運:100億円×79%=79億円
内航近海海運:100億円×9%=9億円
不動産:100億円×12%=12億円
となります。続いて利益はというと、

<利益>
外航海運:79億円×4%=3.16億円
内航近海海運:9億円×7%=0.63億円
不動産:12億円×35%=4.2億円
と計算できます。

ここでわかるのは、飯野海運の利益は実は海運事業よりも不動産事業で多く稼いだということです。飯野海運は市況に左右されやすい海運事業だけでは業績の変動性が大きいので、比較的安定性の高い不動産事業を行っています。少なくとも2015年3月期においてはその目論見が的中し、ある程度安定的な利益を稼いだことがわかります。このように会社四季報の「連結事業」をチェックすることで、その企業がどのようなビジネスを行っているか、またどのような稼ぎ方を行っているかを把握することができるのです。

さらに、「連結事業」欄の最後には「【海外】71」という数字が出てきます。これは、その企業の海外売上比率を示しています。海外売上比率とは売上全体のうち、日本国外で稼いでいる売上の割合です。この欄をチェックすることで、ざっくりとにはなりますが、為替が業績に与える影響を把握することができます。海外売上比率が高い場合には、円安がプラス・円高がマイナスに働きやすいといえます。

このように「連結事業」欄をチェックするだけで、様々な情報を把握することができます。ぜひ皆様も様々な銘柄の「連結事業」をチェックして、意外なビジネスを行っている企業を探してみていただければと思います。

また、本レポートで記載した内容はこちらのセミナーでもお伝えしておりますので、ぜひそちらもご参照ください。

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