シニア・マーケット・アナリスト 金山 敏之が日本企業の決算内容や業界分析等を分かりやすく解説します。
【決算メモ】トヨタ(7203)
大幅減益予想で配当が不透明に
11日にトヨタは営業利益で前期比40%減の1兆7000億円とする2017年3月期の業績予想を発表しました。販売台数が3期ぶりに増えることでの営業面のプラスや3400億円にのぼる原価改善が期待されるものの、一方で円高による為替の影響や諸経費の増加が大きく足を引っ張ることで、営業利益は前期に比べ1兆1539億円も減る計画となっています。
これはコンセンサス予想を大きく上回る減益ですが、マーケットとのかい離が大きいとみられるのが9350億円の減益要因となっている為替の影響です。そのなかでドル円の影響は6300億円のマイナスですが、前期比15円の円高となる105円に想定レートを置けば為替感応度から計算して当然こうなるという数字だといえます。
しかし、マーケットとのかい離が大きいとみられるのがドル円やユーロ円以外のその他の通貨(豪ドルやルーブルなど)の影響で、これが2550億円のマイナスと想定を上回る金額となっています。また、前期に3400億円のマイナス要因だった諸経費の増加が今期に5400億円まで膨らむのも想定外といえそうです。
業績動向にあわせて関心が高いのが配当ですが、トヨタは今期の配当予想を従来通り発表していません。そこで大幅な減益が予想されるなかで今期の配当がどうなるかが心配されます。トヨタの配当方針は「連結配当性向30%を目安に安定的・継続的に配当を行う」で、配当性向に従えば大幅な減配となり、安定的・継続的の方針によれば大幅な減配回避となりますが、どちらなのか今のところトヨタは明確にしていません。
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