日本株銘柄フォーカス

マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー 益嶋 裕が様々な角度から焦点をあてて日本企業を紹介していきます。

益嶋 裕 プロフィール

【決算メモ】サンリオ(8136)

新たな収益源の発掘まで厳しい道は続く

サンリオが11月1日に発表した中間決算は、売上高が前年同期比11.3%減、営業利益は45.8%減と依然として大幅な減益傾向が続く厳しい内容だった(図表1参照)。10日に実施されたアナリスト向け決算説明会に参加したので、その内容を含めて業績動向や今後の展望を簡単にご紹介する。以下の図表2を見れば一目瞭然、サンリオの業績は依然として厳しくなかなか持ち直しの傾向が出ていない。7-9月の3ヶ月間の営業利益は18.5億円と前年同期の37億円からほぼ半減である。

図表1 サンリオの中間期業績

図表2 サンリオの四半期ごとの業績推移

業績低迷の大きな原因の1つが、稼ぎ頭であったロイヤリティビジネスの不振だ。もちろん、そもそもビッグヒットとなるキャラクターがなかなか出てこず、海外を含めて競合にシェアを取られてしまったという側面が大きいだろう。それに加えて会社の方針も影響しているようだ。

近年同社は「ハローキティ」等の人気キャラクターを他の会社の商品とコラボレーションさせ、キャラクターの利用マージンを受け取るというビジネスで業績を拡大させてきた。ただ、今回の決算説明会で辻信太郎社長より、「高いマージンを受け取るこのビジネスは根本的に同社の経営理念に反するところがあり、やめるわけではないが縮小させていく方針が社内で固まってきた」という主旨の発言があった。同社長は常々「みんなが幸せになれる経営」を掲げており、高いマージンを受け取るビジネスは彼の主義主張に相反するということなのかもしれない。

全体に不調である同社のビジネスの中で、サンリオ・ピューロランドの集客が非常に好調で10月の入場者数が過去最高になったとのアナウンスがあった。ブランドの発信拠点である同ランドの好調は好ましいが、同社の収益全般に占める直接的な割合は非常に低く影響は大きくない。

新たな成長ドライブとして探るカフェビジネスと株価動向

説明会で、今後はカフェビジネスに注力していくとの示唆があった。例えば「ハローキティカフェ」のようなキャラクターカフェを展開していくというものだ。その他にもシニア向けのカフェなども検討されている。既に中国などのアジアを中心に数十店舗展開されており、一定の成功事例もあるようだ。ただ、説明会で定量的な開示がなかったため詳細は不明だが現時点ではビジネスへの寄与は限定的だろう。そして同社では将来的にカフェを1,200店舗展開したいとの意向が明らかにされたが、現時点ではあまり現実感のある数字ではないと筆者には思える。

ご紹介してきたような冴えない業績動向を反映し、株価は過去2年間下落基調を続けている。2015年8月の高値からは足元で株価は半値以下になっている。ただ、この夏場以降1,800円どころでは案外底堅さも見せている。これは、株主優待・配当利回り目当ての個人投資家の買いが入っていることが主因とみられる。図表3はサンリオが発表している株主別所有割合の推移である。足元で黄緑色の「外国人」の所有割合が大きく減り、かわりに紫色の「個人」の所有割合が大きく高まっていることがわかる。同社の株主優待は自社キャラクターグッズ、および所有株数に応じた枚数がもられるサンリオ・ピューロランド・ハーモニーランドの優待券である。また、今期の予想1株配当は80円、11日の終値1,878円から計算すると配当利回りは約4.3%と魅力的な利回り水準だ。

同社はこれまで80円の配当を一貫して支払ってきており、好財務体質で減配リスクも少ないと考えられているのかもしれない。
新たな成長ドライブを見つけるまでは株価の大幅な上昇は期待しづらいだろう。ただ、今後も現在の価格帯では配当・優待目当ての個人投資家の買いは期待でき、一定の底堅さは期待できよう。

図表3 サンリオの株主別所有割合

サンリオの株価

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