日本株銘柄フォーカス

マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー 益嶋 裕が様々な角度から焦点をあてて日本企業を紹介していきます。

益嶋 裕 プロフィール

リーマン・ショック後に一番あがっている指数とは? ~好業績の割安銘柄をご紹介~

パフォーマンスが非常に良い東証2部指数

東証2部、についてどのようなイメージをお持ちだろうか。もしかすると「地味」「売買が少ない」「よく知らない銘柄が多い」「値動きがあまりない」といったイメージをお持ちの方も多いかもしれない。ただ、リーマン・ショック後に一番上がっている国内の主要株価指数が東証2部指数であると聞くと、やや意外に思われる方が多いのではないだろうか。

以下のグラフ1は日経平均、TOPIX、日経ジャスダック平均、東証マザーズ指数、東証2部指数の国内主要5指数について、リーマン・ショックが起きた2008年の年末を100としてその後の推移を示したものである。表の通り東証2部指数は2008年末比3.4倍となっており、5指数の中でトップのパフォーマンスである。逆に日経平均は2.2倍、TOPIXは1.9倍と東証2部指数や新興市場の指数に比べて低パフォーマンスであることがわかる。

前述したようなイメージから東証2部上場というだけで、投資対象として遠ざけている方も多いかもしれない。もちろん流動性等の考慮は必要なものの、単純に東証2部上場というだけで投資対象から外しているのであれば、ややもったいないと筆者には思える。東証2部上場銘柄の多くは証券会社のアナリストによる分析がなされていない。筆者にはそういった銘柄にこそ、本来その銘柄が持つ価値とマーケットでの評価に乖離が生じやすく、個人投資家にとって投資チャンスが増えやすいのではないかと考えている。

ただ現在の東証2部指数は指数としてはややいびつであると言わざるをえない。表1は東証2部指数の構成銘柄のうち、指数のウェイトが高い銘柄である。今年降格した東芝(6502)が23%、昨年降格したシャープ(6753)が10%と2銘柄で33%以上を占めているのである。

実際今年に入って、東証2部指数は約1,400ポイント上昇しているがそのうち約530ポイントは東芝とシャープの上昇によるものである。ただ、両銘柄が東証2部指数に採用される前から同指数は継続的に上昇しており、決して2銘柄だけで上昇したというわけではない。本レポートでは、東証2部指数の現在のバリュエーションや好業績にも関わらず割高感のない銘柄などをご紹介したい。

東証2部指数のバリュエーション

これだけ指数が上昇すると、東証2部市場全体が割高なのではないかと懸念される。まずその点を見ていこう。グラフ2は東証2部指数と予想PERの推移を示したものだ。このグラフを見るとこれだけ上昇している東証2部指数だが、現在の予想PERは14倍弱と過去の水準から照らしてかなり割安に見える。ただ、ここにも前述の東芝とシャープの影響が色濃く出てしまっている。PERは時価総額÷純利益で計算されるので、時価総額も純利益の金額も大きい2社の影響が大きいのである。そこで筆者は2社を外した独自の予想PERを計算してみた。PERの計算の元に使うユニバースは最新の2部指数の採用銘柄を利用しているため、厳密には過去の銘柄入れ替えを反映しておらず正確ではないが参考指標として使う分には大きな問題はない。それがグラフ3である。

グラフ3をご覧いただくと東芝とシャープの影響を除いた現在の予想PERは16倍程度と期間中の平均(15倍強)からやや上にあることがわかる。大幅に割安というわけではないが、少なくともバブル的に株価が割高になっているということはなさそうなので、好業績の割安銘柄をピックするには良い状況かもしれない。

投資妙味がありそうな東証2部上場銘柄は

それでは今回も業績の伸びがしっかりしているのにもかかわらず株価に割高感がない銘柄をご紹介していこう。具体的なスクリーニング条件は以下のとおりである。

<スクリーニング条件>
・東証2部上場銘柄
・過去4期分の通期業績が取得可能
・直近3期の通期業績がいずれも前期比で増収・営業増益
・今期の通期の業績予想も増収・営業増益見込み
・予想PERが筆者算出の東証2部の平均PER(16倍)以下
・今期予想の売上高営業利益率が5%以上

上記の条件でスクリーニングしたところ、以下の11銘柄が抽出された(表2)。桧家ホールディングス(1413)、大盛工業(1844)、コーセーアールイー(3246)、ニチリン(5184)、ノザワ(5237)、エスティック(6161)、カネミツ(7208)、エリアクエスト(8912)、日本社宅サービス(8945)、アルプス物流(9055)、旭情報サービス(9799)の11銘柄である。

最後に各銘柄の過去5年間と今期予想の業績およびビジネスの概要をご紹介する。参考にしていただければ幸いである。

桧家ホールディングス(1413)
企画型注文住宅の請負、施工を手がける。コンクリート住宅や断熱材事業、介護保育事業も行っている。直近発表された中間決算では売上の柱は注文住宅事業だが、利益の柱は断熱材事業である。

大盛工業(1844)
下水道工事に特化した建設会社。収益多角化のため不動産事業、太陽光関連事業も手がけている。東京都から施工不良に伴い損害賠償訴訟を提起され、約2億円の賠償金の支払いを行うことを発表している。

コーセーアールイー(3246)
福岡県を中心に居住用および投資用のマンション販売を行っている。業績にしめるウェイトは低いが、賃貸管理やビルメンテナンスなども請け負っている。9月上旬に今期の売上高や利益予想を上方修正した。

ニチリン(5184)
自動車用ホースの大手。2輪用ブレーキホースでは100%近い国内シェアを確保。海外売上高比率が約7割に達する。特定の自動車メーカーの傘下ではなく独立系である。

ノザワ(5237)
ビルの外壁に使われるセメント板メーカー。高単価の向上塗装品が好調で、今期は史上最高益更新見込み。

エスティック(6161)
電動ネジ締め装置が主力で、主に自動車会社向けに出荷している。国内と海外の売上高はほぼ半々。

カネミツ(7208)
自動車向けの部品メーカーで滑車分野では国内首位。日本の全自動車メーカーと取引実績がある。

エリアクエスト(8912)
ビルテナント誘致を手がける。サブリースやビルの管理なども拡大中。

日本社宅サービス(8945)
借り上げ社宅管理代行を行う。マンション管理や修繕工事も手がける。

アルプス物流(9055)
アルプス電気の子会社で物流専門。海外向け売上が約4割。

旭情報サービス(9799)
企業内ネットワークシステムの構築などを手がける独立系情報サービス会社。

(※)印刷用PDFはこちらよりダウンロードいただけます。

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