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山本雅文「投資戦略テーマ」

シニア・ストラテジスト 山本雅文が国内外のファンダメンタルズ分析を基に、主に米ドル、ユーロ、豪ドル相場の先行きの見通しを分かりやすく、かつ深く鋭く分析し予想するレポートです。

[ プロフィール ]

シニア・ストラテジスト 山本 雅文のレポートは2015年10月30日をもって更新は終了しました。これまでご愛読いただきありがとうございました。

2015年07月02日

豪ドル長期見通し:先憂後楽

<要約>
豪ドルは目先、中国の景気減速や主要輸出品価格の低迷などの逆風に直面しており、豪準銀による追加利下げの可能性が残ることから下落リスクがある。もっとも、来年以降は、これまでの資源投資が生産・輸出増や貿易収支の改善に繋がるとみられ、対円で97円方向へのじり高が予想されている。

先憂:資源安と利下げリスク
資源国・高金利通貨として本邦投資家の間でも人気の高い豪ドルは、対円では日銀の異次元緩和を受けた円安もあって2012年の10-12月期以降、概ね豪ドル高円安基調、足許は94円台で推移している。もっとも、対米ドルでは米利上げ見通しや資源価格の下落の影響を受けて2013年以降逆に豪ドル安基調となっており、現在は0.77米ドル/豪ドル近辺と、2009年以来の水準へ下落した今年4月(安値は0.7533米ドル/豪ドル)に接近しており、少なくとも年内は鉄鉱石価格など豪州の主要輸出品価格の更なる低下や、豪準銀(RBA)による追加利下げの可能性が燻る中、下落リスクが続いている。
特に、鉄鉱石や石炭などの主要輸出品価格の下落は為替相場の方向性とも密接な関係がある交易条件(輸出価格/輸入価格)の悪化と豪州の総所得(GDP)の減少に繋がり易い(図表1)。また、これまでの豪州の成長を支えてきた旺盛な資源関連投資が既に2012年度にピークをつけた後、大幅減少が続いており、GDPの需要項目の一つである設備投資の直接的な減少に繋がるほか(図表2)、資源投資関連雇用の減少が労働市場の悪化(賃金上昇率の低下、失業率の高止まりなど)に繋がっている。

こうした中、市場では年内1-2回の追加利下げ観測が燻っており、RBAも鉄鉱石価格の軟調や失業率の上昇見通しを背景に若干のハト派バイアスを維持していることから、豪ドルは来年前半にかけて対米ドルで現在の0.77米ドル前後から0.73米ドルへ、対円で現在の94円前後から92円へ下落すると市場は予想している(図表5、6)。

後楽?:昔取った杵柄
もっとも、豪州経済の先行きの見通しは必ずしも悪くない。2012年に向けて行われた鉄鉱石、石炭、LNGなどの大型資源投資自体は更に減少に向かうと見られる一方、過去の投資により生産・輸出能力が大幅に拡大している。このため、これら資源の価格が低迷したとしても、世界経済が拡大し続ける限り、資源の生産・輸出の拡大とそれに伴う貿易収支の改善が見込まれる。貿易収支の改善はGDP成長率の押し上げにもつながることから、現在市場では今年+2.5%、来年+2.8%、2017年は+3.2%と、成長の加速が予想されている(Bloomberg纏めの市場コンセンサス)。IMF予測では2016年に3%台へ回復する見込みとなっている(図表3)。
この間、豪州ではシドニーやメルボルンを中心に住宅市場の過熱感が高まっている。03年以降の住宅価格の伸びを指数化してみると、豪州はニュージーランドに次いで高い伸びとなっている(図表4)。これまでのところ豪州ではAPRA(豪州プルーデンス規制当局)が活発な投資家向け住宅ローンを主に焦点とした融資規制などのマクロプルーデンス政策で対応しているが、来年以降、豪州景気の回復基調が鮮明となる場合には、住宅バブルに対して金融政策も援用する可能性が高く、2016年以降は一般景気回復に沿った金融政策の正常化と住宅バブルの抑制を両睨みで利上げ期待が高まるとみられ、豪ドル支援材料となりそうだ。

豪ドル長期見通し:短期的に下落後、緩やかな反発へ
こうした豪州のファンダメンタルズ見通しを反映して、市場の豪ドル予想も、対米ドルで来年半ばにかけて現在の0.77ドルから0.73ドルへ下落した後、2018年に向けては再び0.78ドルを回復する見通しとなっている。対円では、米ドル/円の127円への続伸見通しを背景に、来年半ばにかけて現在の94円から92円へ下落するものの小幅に留まり、むしろその後は、ドル/円が2018年にかけて125円へ反落方向となる前提にも拘らず、円より豪ドルの方が上昇率が大きいとの見方から2018年にかけては97円台へ緩やかに反発する見通しとなっている(図表6)。
こうした見通しに対するリスク要因としては、①中国景気の急減速を受けた豪州の交易条件や貿易収支の悪化、および②日本がこれ以上の円安を牽制する姿勢を継続し、2%インフレ目標達成をあきらめ追加緩和を行わない場合の円高進行が挙げられる。

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