<要約>
中国の景気減速懸念と米ドル高が相俟って、コモディティ価格の下落基調が続いており、為替相場も大きな影響を受けている。足許は多くのコモディティが一様に動いているが、本来為替相場への影響は異なる。そこで、金、銅、原油の主要3商品について為替相場との相関性を検証してみると、原油であればカナダドル/円、銅であれば豪ドル/円あるいはカナダドル/円、金であれば米ドル/円と米ドル/南アランドなど、コモディティ毎に相関が高い通貨ペアが異なっているので、大きく変動しているコモディティに合わせて通貨ペアを選ぶ必要がある。
原油:カナダドル/円
原油価格(北海ブレント、ドバイ、WTIの平均)と為替相場について、2010年以降の週次変化率の相関係数を算出してみると(図表1、2)、やはり代表的な産油国の通貨であるカナダドルやロシアルーブルの順相関が強い。特に、ドル/円相場も原油価格と僅かながら順相関があるので、カナダドルは対米ドルよりも対円相場の方が相関が若干強くなっており、原油相場との連動性で取引するならばカナダドル/円が最適ということになる(図表3)。なお、豪ドルやチリペソも連動性が比較的高いが、豪州は鉄鉱石や石炭が、チリでは銅が主要な輸出品目となっており原油の相対的重要性が低く、相関が高くても原油価格を睨んだ取引には適さないかもしれない。
逆に、ノルウェークローナは原油価格との逆相関がみられている(原油安の際にクローナ高)。これは、ノルウェーが原油売却収入を年金基金として蓄積し、そこから対外投資を行っているため、原油価格の上昇局面ではむしろ外貨買い(ドル以外の通貨も含む)が多くなり、クローナが上昇しにくいという事情が背景にあるかもしれない。
銅といえばチリ、チリといえば銅、というくらい、銅価格と為替の関連といえばまず、世界一の産銅国であるチリの通貨ペソが頭に浮かび、実際順相関が非常に高い(図表5、6)。もっとも、実はチリペソだけでなく豪ドル、カナダドルの相関も同様に高い。豪州、カナダともに世界の銅生産ランキングで10位以内に入っているほか、豪州の主要産品である鉄鉱石、あるいはカナダの主要産品である原油と銅の価格がある程度連動していることも、背景にあるかもしれない。なお、米ドル/円も銅価格と僅かながら順相関があることから、対ドル相場よりも対円相場の方が相関性が強いのも特徴だ。このため、銅価格との連動性を睨んで取引する通貨ペアとしては、豪ドル/円とカナダドル/円が最適といえそうだ(図表4)。チリペソは特にアジア時間の流動性が低く取引がしにくいとみられるほか、NZドルも、産銅国ではないため適さない。
金:米ドル/円と米ドル/ランド
金価格(ドル建て)についても同様に通貨ペアとの相関係数を算出すると(図表7、8)、ドルの代替資産としての金の性格(ドル下落時に金が上昇)に加えて、安全資産としての金の性格が円と類似していること(円と金が同時に上昇傾向)もあって、金価格とドル/円相場の逆相関が非常に強い(金価格が上昇するとドル/円相場が下落、図表9)。なお、金がドルの代替資産として取引される傾向を受けて対ドル相場の相関は全般的に高いが、中では産金国南アフリカの通貨ランドの対ドル相場の順相関が安定的に強い(図表10)。
※次回の更新は8月12日(水)または13日(木)の予定です。
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