ストラテジーレポート

チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、実践的な株式投資戦略をご提供します。

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広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)

1年前から約束されていたバブル超え

今日、日経平均は4日続伸で始まり、寄り付きからITバブル時につけた高値である2万833円を抜いた。セオリーで言えば、目標達成感から一旦、利益確定売りに押されて反落となるところだが、「そうはならないのではないか」とテレビ番組の解説で述べた。足元、ここまで急ピッチの株高を演出した原動力は、売り方の買い戻し、典型的な「踏み上げ相場」の様相である。この上昇スピードの速さからみて、まだ買い戻せていない投資家は少なくないだろう。下げたところは買い戻したい投資家がすかさず買いを入れるだろう。一方、この相場に乗れていない投資家も多い。先週、18日の木曜日、日経平均が2万円を割り込んだ日の東証1部売買代金はわずか2兆3000億円にとどまった。絶好の押し目買いチャンスに押し目買いを入れられなかったということだ。直近の安いところを拾えていないのだから、利益確定売りも多くは出ない。また、買い持ちできているバイ&ホールドの投資家は、ここで売る理由もない。降りたら買い戻せない相場だということは身に染みているだろうから、やはり売らない。結果としてあまり下げないということになる。

ここまで急ピッチの上昇となった背景は下げ過ぎの反動だろう。日経平均は5月下旬に12連騰という記録的な上げ相場を演じた。その後には当然の調整が入る。そこまではいい。しかし、グラフ1のトレンド線を下回る領域までの下落は、必要な調整の範囲を超えていた。すくなくとも先週木曜日に2万円を割った下げは「お手付き」というか、完全に余計な下げであった。相場が「ミス・リアクション」したといっていいだろう。FOMCのインプリケーションは「FRBは利上げを急がない」というもの。それは世界のリスク資産にとって最高にポジティブな材料だ。本来は株高で応えるべきところを、日本株は目先、為替が円高に振れたことで下げてしまった、というか売り崩されてしまった。だから余計な下げ、ミス・リアクションだということである。

日経平均がITバブル越え - そんなときだからこそ、ファンダメンタルズをしっかり見るべきだ。この1カ月で業績見通しがじわじわと上昇修正されていることは見逃せない。アナリストの予想平均であるクイックコンセンサスは、この1カ月で3%弱増加している。なんということもない、日経平均はずいぶん高くなったように見えても、業績の上方修正に見合う分だけ上がったに過ぎないのである。

短期的な要因としては、ギリシャの金融支援を巡る協議が進展するとの期待から、投資家心理が上向いていることが挙げられる。米国の利上げペースが緩やかになるとの見方がコンセンサスになり、リスク・オンの地合いが復活したところに、昨日FRBのパウエル理事が、今後の利上げに言及しドル高の流れが鮮明になっていることも日本株に追い風である。

しかし、より長期的な観点からみた日本株上昇の起点は、ちょうど1年前の6月24日に閣議決定された成長戦略の第2弾、「日本再興戦略 改定2014」にある。昨年の成長戦略ではグローバル水準のROEを目標に掲げた。ROEを高めるというのは株価を上げるというのとほぼ同じ意味だから、政府が成長戦略で真っ先にそれを目標に掲げたというのは、株価を上げるのが国策になったということである。このアベノミクス相場は「官製相場」だとよく言われる。僕もそう思う。但し、僕がいう「官製相場」というのは、単にGPIFや日銀など公的資金が株を買い支えているとか、そういうことではない。政治の力で資本市場の根底から変えて株高に持って行っている。ROE重視とコーポレートガバナンスの強化を謳い、企業に株主価値の向上を促した。その国をあげての変革期待が投資家に株を買わせる原動力となった。これは壮大なる官製相場である。今日の日経平均、ITバブルの高値越えは、1年前の今日から約束されていたのである。

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