チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、実践的な株式投資戦略をご提供します。
広木 隆が投資戦略の考え方となる礎を執筆しているコラム広木隆の「新潮流」はこちらでお読みいただけます。
広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)
円高・減益は織り込み済み
テレビ東京ニュースモーニングサテライトが毎週実施している『モーサテ・サーベイ』は、番組出演者にその週の相場展開などを尋ねるアンケート調査である。僕も毎週回答しているが、今週末の日経平均の予想を16,800円と出したら回答者全員のなかで一番の高値予想だった。16,200円が予想の中央値であり最頻値であった。だから僕の回答が並外れて見えて、番組でも取り上げられたし、毎週月曜日恒例のオンラインセミナーでも多くの参加者からそのことについてコメントが寄せられた。
予想の根拠は、番組でも言及されたが、「円高⇒減益というシナリオはほぼ織り込み済み。決算発表一巡でアク抜けして反発する」というものだ。連休を挟んでの6営業日連続安で1400円超も下げた。その半値は戻すだろうと思って、16,800円としたのである。
「円高⇒減益というシナリオはほぼ織り込み済み」というのは、週明けの富士重の反応を見て確信した。8日付の日本経済新聞朝刊は「今期の為替想定レートは1ドル=105円で、17年3月期の営業利益が4300億円程度と、前期推定に比べて2割強減る見通し」と報じた。それにもかかわらず、9日の富士重株は一時、前週末比77円(2.1%)高の3645円まで上昇した。米国での販売比率が他の国内メーカーに比べて高く、円高が一段と業績の重荷になる富士重が、2割減益の観測報道を受けても売られないどころか上昇したのだ。目先、これ以上、株価の重石となる悪材料は出てこない。
今日はいよいよトヨタ自動車の決算発表だ。日本経済新聞の試算では円相場が1ドル=105円ならば営業利益が7000億円規模で目減りするという。7000億円も利益が吹き飛ぶとすれば普通の会社なら潰れている。これが現実のものとなれば、相場に相当なショックが加わることになるが、果たして明日の市場はどのような反応を見せるだろうか。僕は富士重ですでに予行演習済みだと思う。決算の数字を見てから売るという鷹揚な投資家はいないだろう。円高による業績悪化を嫌気して売るなら、とっくの昔に売っているはずである。
なので、仮にトヨタが5期ぶり減益予想を発表し、それでも翌日の相場が下げなかったら、完全にアク抜けしたとみていい。サミット前後に発表されるであろう経済対策を好感して、17000円台半ばまで戻りを試す余地がある。日経平均の予想EPSを1100円、PER 16倍として、17600円がフェアバリューだ。
4月末の日銀金融政策決定会合での追加緩和見送り、それを受けて大型連休中に一時105円台まで進んだ円高、日経平均6日続落、etc.など相当冴えない展開が続いていたのは確かだが、日経平均の下値を見ると、2月には1万5000円割れまで売られたが、4月の下げは終値では1万5700円台で止まった。そして今回は終値で1万6000円を割っていない。着実に下値が切り上がっている。これがトレンドとして夏前に1万8000円を回復できるだろうとする見方の背景である。
無論、いくつもの条件がある。政府が有効な経済対策を打ち出すこと。消費増税の先送りが決まること。6月に日銀が追加緩和に動くこと。そして英国の国民投票でEU離脱が否決されることである。
(※)印刷用PDFはこちらよりダウンロードいただけます。