ストラテジーレポート

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広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)

EU離脱となった英国民投票の結果を受けて

悔やんでも悔やみきれない。残留を見込んだトレードを推奨したことについてではない。ヨミが外れたのは仕方ない。悔やむべくは、離脱となった場合の影響の大きさに警鐘を鳴らさなかったことである。本来、僕の強みは市場の見方の偏りにトレーディング・チャンスやリスクを見出すことにあったはずだ。油断があった、と言うほかはない。

今月上旬に出演したテレビ東京のニュースモーニングサテライトで、「FOMCとBREXIT どちらがブラックスワン(テールリスク)か?」という話をした。示現したときの影響の大きさという点でBREXITのリスクは計り知れず、そしてBREXITとなる確率は相当程度あると警戒されてきた。だから発生確率が低く予見し得なかったことが突発的に起こるというブラックスワンの定義に当てはまらない。そのロジックで言えば、誰もが利上げなしで見方が極端に偏っているFOMCでまさかの利上げとなるほうがよっぽどブラックスワンだ - というような話をしたのであった(これについては6/6<「ギャンブルのすすめ」では決してない理由>をご参照)。

英国はBREXIT(離脱)かBREMAIN(残留)かで、まさに国を二分する議論が続いてきた。直前まで世論調査でもほぼ両勢力は拮抗していた。ところがブックメーカーやマーケットの見方は投票日が近付くにつれ、急速に「残留」に傾いていった。これは実際に投票が開始されていた昨日の海外市場でも続き、シカゴCMEの日経平均先物は16495円、東京の早朝、ドル円相場は106円80銭台をつけた。
つまり、ほとんどが「残留」優位と思っていただけに、そういう状況で万が一「離脱」となれば、強烈なネガティブ・サプライズとなる。影響の大きさから、「プチ・ブラックスワン」となるリスクはあったのだ。
日経平均の下げ幅がここまで大きくなったのはそういうことだ。ショック安、パニック安の要素がある。プログラム売買も絡んで「離脱なら売り」という値段に関係なく手放す売りも出た。売り一巡後、市場が冷静になり、合理的な評価をすれば下値で買う動きも出るだろう。

日経平均の終値は、2月に15000円割れとなったところに並んだ。が、前回は1株純資産(BPS)が約15000円だった。ところが今期は在外子会社の為替評価などの影響で前期よりもBPSが減ってしまっているので14630円くらい。前回同様、PBR0.99倍まで売られると 14500円割れまであるだろう。(純資産の減少と14500円下値目途については5/25付<減少した上場企業の純資産>で述べた。ご参照ください)

そうした押し目買いで短期的なリバウンドはあるだろう。だが、これまで繰り返してきたように、いちど相場が大きく崩れてしまうと、短期的にはリバウンドしてもそう簡単に底は入らず、2番底、3番底まで探る。記憶に新しいところでは昨年のチャイナショック。大きく崩れてから、短期反発を入れながら3番底をつけにいった。短期的な戻りの目途は、6/1高値17145円からの下げ幅の38.2%(フィボナッチ)戻しの15700円~15800円程度か。15000円台前半は取引高のないいわば「真空地帯」なので戻り待ち売りはでない。フィボナッチの38.2%は大幅安した後の反発の目安でもあるし、昨年チャイナショックのときもそうだった。

BREXITが英国だけの問題にとどまらず、欧州主要国に広がりを見せることが真のリスクである。世界的な不透明感の高まりからリスク回避の動きが円高を伴い日本株の重石になり続けるだろう。ただし、悪いことばかりではない。作用・反作用の法則で、悪材料が強まれば、それに対抗しようという力も生まれる。円高株安を放置して参院選を戦えるわけがない。財政出動と日銀の金融緩和、しかも相当強力なものが出る期待が戻り相場の原動力になるだろう。繰り返しになるが、その戻り相場とは、本格反騰ではなく、あくまで初期リバウンドであるが。

BREXITはグローバリゼーションの限界を示す象徴であり、さらに言えばグローバル資本主義の危機の象徴である。それこそがマーケットが脆弱である根本的・構造的要因である。この点については、また詳しく述べたい。

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