チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、実践的な株式投資戦略をご提供します。
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広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)
バリュエーションの上昇による日経平均1万8000円の可能性
巷には、「長期的な株高には、自律的な景気拡大と企業の好業績による業績相場への転換が不可欠」という論調が目立つ。ごもっともな意見だが、逆にそんな世界はバラ色過ぎて高望みというものではないか。
但し、1年越しで下がってきたバリュエーション(すなわち投資家心理)が、少し改善するだけで、業績の拡大なしでも、前回のレポートで示した日経平均1万8000円程度ならじゅうぶん届く水準だということを指摘したい。
前回、「現在はPER14倍程度(1200×14=1万6800円)だが、年末にはPERの過去平均である15倍程度に戻ると思われる」と述べたところ、レポートの読者から、「少し、見通しが甘いのでは?」とのご意見をいただいた。こちらとしても、前回のレポートはテクニカル的なことを多く書いて、バリュエーション面の説明はさらっと述べただけだったという反省もあるので、補足したいと思う。
株価は、企業の利益(ファンダメンタルズ)と、それを市場がどれだけ評価できるか(センチメント)で決まるとする考え方がある。その代表例が、株価を予想1株当たり利益(EPS)と株価収益率(PER)の積で表すものだ。
株価 = 予想1株当たり利益(EPS)× 株価収益率(PER)
日経平均がアベノミクス相場開始以来の高値を付けたのが昨年の6月。現在の1万6800円はその高値から比べると約2割下がった水準にある。昨年6月に高値をつけた時のPERは16.6 倍、今が14倍だから、PERは15%低下した。EPSはこの間、1257円から1193円へ5%低下した。
つまり、昨年の高値からの下落率20%のうち、PERの低下による分が15%、 EPSの低下による分が5%ということである。さきほど述べた、「株価は、企業の利益(ファンダメンタルズ)と、それを市場がどれだけ評価できるか(センチメント)で決まる」という考えに照らせば、ファンダメンタルズの悪化よりも市場心理の悪化がこの1年あまりの下落相場の要因だった。
現在のPER14倍は、過去平均の15倍に比べて低い。それだけ市場がファンダメンタルズを割り引いて評価しているということである。今後、年末にかけて市場が低い評価しかできない要因である不透明材料が取り除かれれば、PERは上昇するだろう。昨年高値時の16倍台は無理としても過去平均並みの15倍は望めると思う。EPSが変わらなければ日経平均は1万8000円となる。
株価 = 予想1株当たり利益(EPS) × 株価収益率(PER)
<現在>16800円 = 1200円 × 14倍
<年末>18000円 = 1200円 × 15倍
このロジックで、日経平均が1万8000円となるには、ふたつの条件を検証することが必要だ。EPSが1200円で変わらないという仮定と、PERが15倍に上昇するという仮定である。
その点について、こちらのブログで述べているのでご確認願いたい。
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