チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、実践的な株式投資戦略をご提供します。
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広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)
NYダウ平均、史上初の2万ドルの大台へ
ダウ平均が2万ドルの大台に到達した。トランプ大統領も、Great!とつぶやいた。
昨年11/25付の僕のブログで述べたように、 19,000ドルの大台更新まで 483日を要した。18,000ドル越えから約2年かかった。それが今回は42営業日。ITバブル期以来、史上2番目に速い大台替りである。
いま、ブログの日付を見て思った。ブログの日付は11/25、そしてダウが2万ドルに乗せた昨日が1/25。ちょうど2カ月である(ダウ平均が 19,000ドルを付けたのは11/22)。この2カ月の間には、感謝祭、年末商戦、FRBによる利上げ、クリスマス、大納会、大発会、そしてトランプ大統領就任式といろいろなことがあったが、2016年が終わり2017年という新しい年が始まるその前後1カ月という期間で、NYダウ平均は大台替りを果たした。トランプ氏が大統領選で勝利した2週間後にダウは19000ドルに乗せ、トランプ氏が大統領に就任した5日(3営業日)後に2万ドルに乗せた。この躍動感、このダイナミズム。まさに新しい時代の到来を予感させるような動きではないか。
僕はトランプ大統領就任から「トランプラリー第2幕のスタート」と主張してきた。ダウ平均2万ドル達成は、その号砲である。
トランプ新政権の政策が不透明だ、などという、とってつけた理由でこのところの相場低迷を説明する解説が多かったが、前回のレポートで述べた通り的外れであろう。政権がまだ本格稼働していないにもかかわらず、トランプ大統領は積極的にメッセージを発し続け、米国経済を活性化させようとしている。外交や通商政策は確かに不透明だが、減税や規制緩和の方針は変わっていないことが読み取れる。それに企業も米国市場も鼓舞されている感がある。
折しも米国は決算発表が佳境に入ってきている。トムソンロイターの調べでは、S&P500の利益の伸びは2016年Q4が6.3%となる見込み。以降、四半期ごとに13.6% 11.9% 10.2%と2ケタ増が続く。米国企業の業績回復が株高の背景にある。
もっとも、それら2ケタ増益の向こう4四半期の業績を織り込んでPERは17倍だ。このバリュエーションの高さをどうこなすか。特に金利見合いのバリュエーションは割高感が強い。米国の10年債利回りがボトム(1.3579%)をつけた昨年7月8日のS&P500は2129.9で4四半期先の予想PERは16.5倍だった。益利回りは6%以上あり、金利とのスプレッドは4.7%あった。現在10年債利回りは2.5%にまで上昇する一方、PERはさらに上昇して17倍、益利回りは6%を下回り、金利とのスプレッドは3.36%に低下している。
金利見合いのバリュエーション、すなわちイールドスプレッドの適正な水準をどこに求めるかについては正解がない。単純に過去平均を当てはめるわけにはいかないだろう。過去35年にわたった金利低下の時代が終わった可能性があるからだ。2015年5月11日に書いたストラテジーレポート「米国金利は上昇するか」ではこう述べている。
<イールドスプレッドの1985年から現在まで過去30年の平均は1.5%であるのに対して、現在は3.8%である。つまり、金利見合いのバリュエーションという観点では株はまだ割高ではなく、歴史的にプレミアムがたっぷり上乗せされた状態であり、むしろ割安と見ることさえできるかもしれない。(中略)
株式が割高でないのか、あるいは金利が低すぎるのか?われわれはこの議論をさんざん繰り返してきた。ざっくりとした感覚で言えば、株はバブルの入り口、債券は既に超バブル - そんなところだろう。株式は「かなり割高」ではないが、明らかに「割安」ではない。一方、債券は異常に買われ過ぎているため、現在の超低金利を基準に物事を評価するのは大変危険である。>
いずれにせよ、新たな時代、新たな局面に突入したことは間違いない。前掲したブログのタイトル・バックに使ったWSJの見出しをもう一度ここで引用しよう。
"Blue-Chip Stocks Power Through New Milestone"
日本語にすれば、「優良株(ダウ平均のこと) 新たなマイルストーンに」ということだが、実は"Power Through"という言葉がミソである。"Power Through"には、「困難であってもやり遂げる」という意味がある。史上初の2万ドルに乗せたNYダウ平均。ここから先は、タフな相場を乗り切っていかなければならない。
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