チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、実践的な株式投資戦略をご提供します。
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広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)
日経平均 年度末2万5000円に ~日経平均の連騰記録と9つの原理
伊藤穣一とジェフ・ハウによる『9プリンシプルズ 加速する未来で勝ち残るために』は、IoT/AI時代における必読の本である。この本で述べられている9つの原理原則とは以下の通り。
1. 権威より創発
2. プッシュよりプル
3. 地図よりコンパス
4. 安全よりリスク
5. 従うより不服従
6. 理論より実践
7. 能力より多様性
8. 強さより回復力
9. モノよりシステム
僕は、この本が出版される前から「地図よりコンパス」という言葉に痺れて、手帳に書きつけていた(僕がメモ魔で数多くの名言・箴言を集めるのが趣味だということは以前にも書いた)。著者であるMITメディアラボ所長・伊藤穰一氏は5年近くも前に、『WIRED』VOL. 5(教育特集:「未来の学校」)でこう語っている。
<これだけ世の中にスピードが出てきて複雑になると「地図」、つまり事前の計画は役に立ちませんし、地図を製作するためのコストも高くつきます。むしろ、大事なのは「何をしたいか」という「コンパス」をしっかりもつことで、企業でもトップがしっかりした磁石をもっていれば、現場は方向性を間違えずに動けます。3.11のときいちばんカッコよかったのは消防のサイバーレスキュー隊でした。彼らは現場にあって自分たちのコンパスを頼りに仕事を遂行しましたが、地図だけをあてにしていた偉い人たちは、結局何の対処もできませんでしたよね。>
東芝、三菱自、日産、神戸製鋼 - 相次ぐ大企業の不祥事の背景を考えるとき、伊藤氏の言葉を思い出す。企業のトップがしっかりした磁石をもっていれば、現場は方向性を間違えずに動けたのではないか。いずれにせよ、これだけ速い激変の時代、旧来の「地図」に頼るのはかえって道を誤る危険性があるということだ。肝に銘じたい。
日経平均が昨日まで16日続伸した。今日も続伸で始まり寄り付きで2万1900円をつけた。10月2日、テレビ東京の「ニュースモーニングサテライト」に出演した僕は、年内残り3カ月の見通しを訊かれて、年末2万2000円の目標を変えない、と答えたが既にほぼ達成されたと言えるだろう。その時からである。この日経平均の連騰が始まったのは。そして今週月曜日、再び「モーサテ」に出演、日経平均は15連騰でこれまでの最長続伸記録を塗り替えるだろう、と述べた。
「ニュースモーニングサテライト」は、ゲストがフリップに自ら手書きする『今日の経済視点』で番組のエンディングを迎える。月曜日に僕が書いた言葉は、
長さより高さ
何日続伸とか最長連騰記録とか騒ぐが肝心の株価水準はまだバブル期につけた高値の半分をやっと超えたところだ。諸外国の株価は史上最高値である。デフォルト常連国のアルゼンチンの株価でさえ史上最高値を更新している。
企業の利益が過去最高なのに、株価は過去最高値の半値である。ということは過去の株価評価が間違っていたということに他ならないのであるということは、前のレポートで書いた通り。過去を嘆いても仕方ない。昨日より今日、今日より明日と一歩一歩前に進むしかない。現在はバブルの清算を終え、まっとうなバリュエーションになっている。1カ月前のレポートで掲げたPERレンジをアップデイトしておこう。
12カ月先のEPSに基づくPERだから、日経新聞に掲載されているもの(今期予想:昨日時点で15.2倍)とは異なる。株価は1年先の業績を織り込むものだから、もう残り5カ月となった18年/3月期の業績だけみていては過少評価になる。今期と来期を按分したEPSはすでに1500円近くに達している。
グラフから明らかな通り、過去1年のPERは14倍を中心として13~15倍のレンジで推移してきた。ここからはレンジをひとつ切り上げて15倍を中心に14~16倍のレンジとなるだろう。長期の平均が15倍だからノーマルな水準に回帰するだけのことである。1500円のEPSを16倍で評価すると2万4000円である。スパンを年度末までに広げればじゅうぶん達成可能だろう。おそらく来年3月時点で1年先のEPSを見れば5%程度のアップサイドがあるだろう。1575円×PER16倍なら、2万5000円を超えてくる。
年度末の日経平均は、2万5000円。荒唐無稽に聞こえるだろうか?『9プリンシプルズ』の訳者・山形浩生氏は「あとがき」で、この9つの原理をわかりやすい言葉に、もういちど翻訳してくれている。
・自然発生的な動きを大事にしよう
・自主性と柔軟性に任せてみよう
・先のことはわからないから、おおざっぱな方向性で動こう
・ルールは変わるものだから、過度にしばられないようにしよう
・むしろ敢えてルールから外れてみることも重要
・あれこれ考えるより、まずやってみよう
・ピンポイントで総力戦やっても外れるから、取り組みもメンバーも多様性を持たせよう
・ガチガチに防御をかためるより回復力を重視しよう
・単純な製品よりはもっと広い社会的な影響を考えよう
『9プリンシプルズ』のサブ・タイトルは、「加速する未来で勝ち残るために」であるが、上記を読めば、「加速する株式市場で勝ち残るために」としてもまったく違和感がないどころか、これこそまさに、これからのマーケットでサバイブする必須の原理だと思えてくる。
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