チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、実践的な株式投資戦略をご提供します。
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広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)
日経平均 3万円の根拠 PART2
PART1 をリリースしてから、しばらく時間が経つ間に、日経平均のEPSは1523円まで上方修正されてきた。前回は、ごちゃごちゃ書き過ぎたので、この最新の数字を使って、もっとシンプルにPART1の議論をおさらいしておこう。
4-9月期の決算発表が終わって、日経平均のEPSが1523円ということは、期初の1400円から8.8%上方修正されたということだ。上期と同様の事業環境はおそらく下期も続くだろう。上期に起きたのと同様の上方修正が下期にも起きると仮定すると、今年度の着地は1657円となる。
問題は来期の業績をどう見るかだが、現在のアナリスト・コンセンサスは来期8%増益を見込んでいる。この見通しが変わらなければ、来年度のEPSは1790円程度を見ることになる。
実際に、アナリストの来期予想というものは、足元の今期予想が上方修正されれば、それをベースにそっくりそのままスライドさせて形成されるようである。グラフはクィック・コンセンサスから求めた日経平均の今期・来期のEPSだが、パラレルに上方シフトしているのがみてとれる。おそらく来期がスタートする段階では、そのまま8%増益がコンセンサスとして使われるだろう。
このままいけば今期の増益率は約2割だから、そこから比べれば来期増益率8%というのは利益成長率が急減速するという見通しになる。相当、保守的な仮定である。その相当保守的な仮定のEPSを、PER 16.8倍まで評価すれば3万円にとどく。
①今年度下期も、上期と同率の上方修正がなされる
②来期の増益率は今期予想から大幅低下の8%(アナリスト・コンセンサス)
③PERは過去5年間の平均15.5倍から1倍強上の16.8倍まで拡大する
この仮定はじゅうぶん現実的だろう。この通りになれば3万円である。
PART2はPBRの話である。日経平均のPBR1.29倍をもとにすれば現在の実績BPSは1万7460円ということだ。今年度のEPSの着地として1657円が見込まれるなら、配当性向35%(内部留保率65%)として、1077円が実績BPSに上乗せされる。
現状の為替や株式市場の環境からして、その他の包括利益の累計額の内訳である「在外営業体の換算差額」や「年金制度の再測定」の項目がマイナスになることは想定しにくい。むしろ円安でさらに純資産が増える可能性があるがそれは仮定には入れず、純粋に今期稼いだ利益の内部留保で利益剰余金が増える分だけ純資産が大きくなると仮定する。
すると来期に適用される実績BPSは1万8537円になるだろう。このBPS1万8537円を分母として、分子にさきほどの予想EPS1789円とおいて除したものがROE(自己資本利益率)だ。9.7%程度になる。
PERPBRROEの関係をおさらいすると以下の通り。
PBRはPERとROEの積で表される。ROEが9.7%と予想されるとき、PERとPBRの関係は以下の通り。
BPS1万8537円が約6割のプレミアムをつけて評価されれば(PBR1.6倍まで買われれば)3万円に達する。それはこの利益率の仮定でPERが17倍近くまで上昇することと同じ意味である。
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