ストラテジーレポート

チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、実践的な株式投資戦略をご提供します。

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広木 隆 プロフィール Twitter(@TakashiHiroki)

確信度の高い1年後の予想と予告 

「今週のマーケット展望」では、2万3000円の大台を前に水準固めの動きと書いた。想定通りの展開となっている。来週から本格化する4-6月期の決算発表を材料として2万3000円の大台を抜けてくるだろう。2万3000円は2回試して抜けられずWトップを形成している壁である。ここを抜ければ1/23に付けた年初来高値2万4124円が視野に入る。1/23に高値を付けた時の日経平均のPERは15倍台後半だったが、現在の予想EPSをもとにすれば2万4124円になってもPERはまだ14.3倍。前回の高値からちょうど半年が経過、信用取引の期日明けのタイミングでもあり需給面でも軽くなっている。

タイミングと言えば、僕は従来から「2カ月サイクル」というのを主張している(5/25付ストラテジーレポート「小回り2カ月と強い銘柄」)。およそ2カ月、営業日で40日前後で相場の潮目が変わるというのが最近の特徴である。そのレポートを書いたのが5/25。そこから目先2カ月は調整ではないか、と述べた。その後の実際の相場は5/21の2万3002円を抜けられずWトップとなって2万1000円台半ばまで下値を探る動きとなった。その下値から急速に切り替えし、ようやく上抜けするタイミングになってきたように思われる。

なんだかんだ言っても、日本株と為替の相関は強い。ところが6月半ばからは完全に為替を無視する流れだった。貿易戦争とさんざん騒がれたが、為替市場では円高にならずドル高だった。僕は従来から「保護主義は自国通貨高」というマクロ経済学の理論を主張してきたが、実際の相場でもその通りの動きだった。それなのに市場の一部では「理解不能のドル高」などと言われる始末で、日本株相場もこのドル高円安の持続性に懐疑的だった。そうした見方もようやく修正されてきたということなのだろう。今日の日経新聞には日本株は欧米株に比べて出遅れているという話があったけど、出遅れているのはむしろドル円相場に対してである。6月以降、無視してきた円安にキャッチアップするだけでも相当程度の上値余地があるだろう。単なる「絵合わせ」に過ぎないが、このグラフ通りにフルにキャッチアップすることを想定すれば、上述の2万4000円台高値トライも正当化されるだろう。

日経平均(赤)とドル円(緑)

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(出所:Bloomberg)

さて、今日、7月20日は何の日かご存知だろうか。今から49年前の7月20日、人類が初めて月に降り立った日である。つまり来年の7月20日でアポロ11号の月面着陸から丸50周年になる。来年の夏は人類の月面着陸50周年の特集が世間の耳目を集めることは間違いない。確信度の高い予想というのはそのことである。それと相場となんの関係があるのか。

その前に、2012年9月4日付レポート「光と波 PART2」で引用したJ.F.ケネディのライス大学でのスピーチを再掲する。

We choose to go to the moon in this decade and do the other things, not because they are easy, but because they are hard, because that goal will serve to organize and measure the best of our energies and skills, because that challenge is one that we are willing to accept, one we are unwilling to postpone, and one which we intend to win, and the others, too.

<我々が 10 年以内に月に行こうなどと決めたのは、それが容易だからではありません。むしろ困難だか らです。この目標が、我々のもつ行動力や技術の最善といえるものを集結しそれがどれほどのものかを知 るのに役立つこととなるからです。その挑戦こそ、我々が受けて立つことを望み、先延ばしすることを望まないものだからです。そして、これこそが、我々が勝ち取ろうと志すものであり、我々以外にとってもそうだから です。>

60年代初頭、アメリカがアポロ計画を立てた時、もちろん月に人間を送るなどというアイデアは夢物語でしかなかった。そんな技術も開発資金も目途すらたっていなかった。それでもケネディとアメリカは、「やる」と決めたのである。以来、ムーンショット(月ロケットの打ち上げ)という言葉は、「困難で莫大な費用のかかる取り組みだが、実現すれば大きなインパクトが期待できるもの」のアナロジーになった。

いま世界が直面する大きな課題、それはSDGsである。17の持続可能な開発目標を2015年の国連総会で193の国連加盟国は満場一致で採択した。しかし、その達成に向けては大きなチャレンジがある。だから、なのである。そのチャレンジをするためにはムーンショットが必要で、それにまい進することで世界中でイノベーションが促進されるだろう。それこそが、低成長の世界経済を停滞から救う唯一の道である。

来年のアポロ11号から50周年は、再び世界にムーンショットの必要性を呼び起こさせ、それがSDGsとつながることで人類の大きなチャレンジのためのイノベーション促進の起点となるだろう。

トランプ大統領は「Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)」という。しかし、世界はマクロン・フランス大統領の「「Make Our Planet Great Again(我々の惑星を再び偉大に)」を支持するだろう。

これが「確信度の高い予想」である。「予告」というのは、これに関連した、すなわちSDGsとESGについてのレポートを近日中に書くつもりである、ということだ。

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