今年は昭和100年とのことですが、もうひとつ、重要な節目を迎えるのが量子力学です。100年前の1925年に、ハイゼンベルクとシュレーディンガーという二人の物理学者が、量子力学の初期の枠組みを作りました。これを記念し、国連は、今年を「国際量子科学技術年(IYQ)」と定めました。来週には、米国アナハイムで、1万4000人もの学者等を集めて国際物理学サミットが開催されます。
量子とは、原子やそれを構成する電子、陽子、中性子、さらに小さなニュートリノやクォークのこと。ここまでは学校でも習った用語。私以外全員が物理屋という拙宅でもこれらの単語が食卓を飛び交っていました。ところが難題はここからで、量子力学とは、これらの超細かい粒子が我々の世界が想定するのとは全くことなる振る舞いをする、これを研究する学問とのこと。なんじゃそりゃ、という感じです…。かつてノーベル賞を受賞した物理学者ですら「量子力学を真に理解している者はひとりもいないにもかかわらず、使い方だけはわかっているという、謎めいて混乱した学問領域である」(マレー・ゲルマン)と言っていますので、この部分は専門家の書籍等をお読みください。
いずれにしても、その技術の活用については近年大きな進展がみられています。昨年12月には、グーグルが新たな量子チップ「ウィロー」を発表したことが話題になりました。これにより、従来のスーパーコンピューターが10の25乗年かかる計算を、わずか5分で完了することができるとされています。量子コンピュータは、エラーが多いのが難点とされますが、先月マイクロソフトはこれを緩和する技術を発表しました。市場でも関連銘柄がそれぞれ活況を呈しました。因みに金融機関でも、JPモルガンや欧州の金融グループが量子技術開発に投資しています。
量子コンピュータが実用化されれば、極めて大量のデータが超高速に処理ができるため、例えば膨大な化合物の組み合わせから最適な候補を見つけ出す創薬プロセスへの応用にも期待が集まっています。株価予想等では、その計算の速さから他社の追随を許さないモデル構築の可能性も考えられます。更に進むと、メールや暗号資産などの様々な暗号を解いてしまうとされ、量子耐性のある暗号資産も検討の初期段階に入っています。
投資の神様ウォーレン・バフェット氏は「わからないものには投資しない」と言っています。しかし、量子技術も含め、最近では技術が専門化・細分化しているだけに、わからないから投資しない、と言っていると革新的成長を取り逃がします。折衷案として、投資信託などを通じてプロの目利き(それも完全ではありませんが…)に頼り、最先端の不可思議な技術が見せてくれる『夢』を取り込むことを考えたいです。
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