アクティビスト・トランプのせいで、世界の金融市場は荒れに荒れています。一番荒れているのは株式市場です。為替は、トランプ政権には弱いドルにしたい(これは高い関税を掛けるのと同じ効果があります)という強い意志があり、短期金利は国の意志によって或る程度は誘導できるので、比較的(他の市場に比べると)低めのボラティリティでドル安方向にじわじわと動いています。長期金利は国によるコントロールが簡単ではないので、当然かなり動いています。株価が大きく動く中で、何かしらの大きな換金売りが出て、アメリカの長期債の金利が大きく上振れしたのはやや想定外でしたが、いずれにしろ高めのボラティリティで動いています。然しながら基本は方向は一定です。
何と云っても荒れ方が尋常でないのは株式市場です。株価は、色々な説明の仕方がありますが、ひとつの説明方法は、企業の利益水準にPER(株価収益率)を掛け合わせたものです。企業の株式価値を、その企業の純利益の何年分である、と定義し、その「何年分」がPERになります。PERはマルチプルとも云います。マルチプルは、その企業の利益水準がどれだけ安定的に続くかに深く関連するので、信頼度の表れとも云えます。
トランプが関税を上げたり、突然更に上げたり、或いは急に一時停止したり、そのようなことに株式市場は翻弄されていると云いますが、実際には株価のブレは、期待関税率のブレによる企業の利益水準のブレと、マルチプル(=PER=信頼度)のブレの掛け合わせによって起きています。株価のブレの大きさを見ていると、それはこの数式の前半の見積もりのブレよりも、数式の後半、即ちマルチプル=信頼度のブレの方が遙かに大きいと思われます。株価を荒らしているのは、市場参加者の心のブレが大きな要因なのです。このことは、株式市場のブレが、為替や金利市場よりはるかに大きいことからも分かります。
私たちの心が、トランプを好きだ(って人は今は減ったと思いますが)嫌いだ、信用出来ない出来る、とブレているのです。トランプは unpredictable=予想出来ない、と多くの人が評論しそれが市場を荒れさせている、と解説されますが、一番 unpredictable なのは私たちの心です。しかしニーチェは云いました。人間は慣れる動物である、と。アリストテレスもモンテーニュもドストエフスキーも、皆同じことを云っています。我々は慣れるのです。そしてそれは、時間と共に加速的に慣れていくのです。そうなると、マルチプルが戻り始めます。そうして株価は安定し始めるでしょう。
どれだけの長さかは定かではありませんが、時間の問題です。この嵐が過ぎ去るのを待ちましょう。そしてそれは主に自分達の不安の嵐が過ぎるのを待つことです。それは自分達でも或る程度コントロール出来る、コントロールするよう努力出来ることです。今は落ち着くことが大切ですね。
過去の「松本大のつぶやき」はこちら(マネクリへ移動します。)