アナリスト夜話(やわ)

大槻 奈那

チーフ・アナリスト大槻 奈那が、金融市場でのさまざまな出来事を女性目線で発信します。

大槻 奈那 プロフィール

第4回 深刻化する人種問題:「汝の隣人を愛せるか」

オランダに「ポストコード・ロタリー」という宝くじがあるのをご存じでしょうか。普通の宝くじと違って、当選は郵便番号ごとに決まります。但し、お金を受け取る権利があるのは、当選した地域の住人のうち、事前にくじを買っていた人々だけ。毎月定額の掛け金が引き落とされます。オランダの宝くじの中では最も人気があるといいます。

人気の秘密は、毎月定額購入という手軽さに加え、富を逃した場合の悔しさのようです。もし、自分のエリアが当選したのに、くじに申し込んでいなかったら、同じ町内の人が大金を得るのを目の当たりにすることになる。それはイヤなのでつい申し込んでしまう、ということのようです。人は近いものほど興味を持つし、自分と比べて嫉妬や闘争心など、強烈な感情を覚えるものです。

最近、民族間の対立に関するニュースが目立っています。先週アメリカ南部で起きた警官と黒人住民の痛ましい対立事件は、今や憎悪の連鎖の様相を呈しています。先月のイギリスの国民選挙でも、移民受け入れへの反発が原動力となり、EU離脱が選択されました。

しかし、そもそも米国では、現職大統領がアフリカ系ですし、英国では、今年5月に、ロンドンでイスラム系の市長サディク・カーン氏が当選しています。これまでも、優秀な移民がアメリカやイギリスの経済成長を支えてきました。このように、都市部で働く高官が異なる人種や民族であっても感情的に問題にはならない。遠い存在だからです。

ところが、近所に住む異民族の人々と直接接触し、彼らの楽しそうな生活を目の当たりにしたりすると、「ポストコード・ロタリー」の法則から、とたんに反感を抱くようになるようです。

人口減少が進む先進諸国では、成長持続のための移民の受け入れが今後ますます大きなテーマになるでしょう。しかし、それが紛争の火種になれば本末転倒です。世界的に身近な存在になりつつある"異分子"に反感を覚えるのではなく、尊重し合う気持ちが求められます。汝の「隣人」を愛せるかどうか...民族間の融合を願うばかりです。

マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那

【お知らせ】「メールマガジン新潮流」(ご登録は無料です。)

チーフ・ストラテジスト広木 隆の<今週の相場展望>とコラム「新潮流」とチーフ・アナリスト大槻 奈那が金融市場でのさまざまな出来事を女性目線で発信する「アナリスト夜話」などを毎週原則月曜日に配信します。メールマガジンのご登録はこちらから

コラムをお読みになったご感想・ご意見をお聞かせください。
ご質問の場合は、「コラム名」を明記のうえ、以下より投稿してください。

過去のコラム


マネックスレポート一覧

当社の口座開設・維持費は無料です。口座開設にあたっては、「契約締結前交付書面」で内容をよくご確認ください。
当社は、本書の内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更または削除されることがございます。当社は本書の内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。本書の内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・配布することはできません。内容に関するご質問・ご照会等にはお応え致しかねますので、あらかじめご容赦ください。