チーフ・アナリスト大槻 奈那が、金融市場でのさまざまな出来事を女性目線で発信します。
第7回 外食産業のロボット化:それでも人間が絶対に負けない2つの点
最近、弊社に来ていた大学生数人に飲み代を聞いて愕然としました。なんと、一回一人2,500円前後だそうです。飲み放題付のこともあるそうです。これだと数十年前の私の学生時代と変わらないレベル... デフレの威力を改めて実感しました。
外食産業のデフレの歴史は1994年に遡ります。日本マクドナルドが500円切りの「バリューセット」を発売して以来20年余り、外食産業には越えられない「500円の壁」が存在するといいます。確かに弊社の近所でも、ランチタイムになると500円ぽっきりの屋台が立ち並びます。ファミレスのガストの日替わりランチも「499円」と、「500円の壁」を意識した価格設定になっています。
しかしその間、飲食店などのパートタイムの時給はじわじわと上昇しています。それでも利益を確保するため、さまざまなところを機械化し、効率化を計っています。例えば、ごはんをふんわり盛り付けたり、お寿司を握ったりする機械は既に当たり前の世界です。
外食の自動化は、バックヤードだけではありません。ある豪華客船には、「ロボットバーテンダー」なるものも登場しました。今は、「やっぱり食事は人間の手から渡されてこそ」と言っている人々も、完璧な美男美女ロボットが「はい、よろこんで!」と元気いっぱいに注文を受けてくれたら心が揺らぐことでしょう。
しかし、ある学者の方曰く、どんなに技術が発達しても、2つだけ、ロボットには決してできないことがあるそうです。それは、「謝ること」と「責任をとること」。確かに、ロボットにいくら必死で謝られても、ありがたみもないですし、ロボットが失敗の責任を取って辞任しても、次のロボットが店頭に立つだけでは、怒りも収まらない気がします。
かといって、気付いたら人間のレゾン・デタは、謝罪要員・・・などということになれば悲哀の極みです。独自性を出すような技術や新規性を常に追い求めたいものです。
マネックス証券 チーフ・アナリスト 大槻 奈那