アナリスト夜話(やわ)

大槻 奈那

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第23回 NISA失効の危機?改めて考えるマイナンバー制

先週の日経新聞に、相次いでNISA(少額投資非課税制度)の"失効リスク"についての記事が掲載されました。

来年1月以降のNISA口座継続には、17年9月末までにマイナンバーの届け出がなされないと失効してしまいます。一旦NISA口座が失効してしまった場合、もう一度、新規で口座を開設する手続きが必要となってしまい、結構面倒です。2010年の「エコポイント」のように、多少の期限延期もあり得ますが、延期には法手続きが必要なため不透明です。

日経・滝田洋一編集委員は、先週火曜日の記事でこのマイナンバー提出が進んでいないことを解説。日曜日の同紙の記事は、こうしたマイナンバー未提出のNISA口座が、野村證券で5割、大和で8割に上ると指摘しています。

NISA口座数は、14年1月の開始から16年末までの3年間で、労働年齢人口の13%分に当たる1,069万口座まで積み上がりました。仮にその1割の手続きが遅れただけで107万口座が失効する計算です。

もっとも、現在のNISA口座では、稼動口座は半分もありません。非稼動口座の方が書類提出が少ないとすれば、NISAの運用残高は意外と減らず、税務的な混乱は少ないのかもしれません。

そうだとしても、まだまだマイナンバー制度には課題山積です。18年末までには、2,300万に上る証券口座のマイナンバー登録義務化も予定されています。銀行口座については未定ですが、将来的には同じく登録義務化の方向です。

これらが進めば、一人ひとりが計算書類を作成して提出するという、極めて非生産的な確定申告の手続きが不要になるかもしれません。実際、北欧では、あらゆる税額控除が、税務署から送付される計算書類にサインするだけで済むようになっています。

他にも、1990年に"ICT国宣言"をしたエストニアでは、お薬手帳から各店舗のポイントカードまで共通番号で管理・利用しています。不動産等各種取引に必要な取引書類が、共通番号制で簡略化されている国もあります。

どの国も、導入当初は、当然にして反対運動もあったようですが、利便性が理解されるにつれて定着してきました。しかし、現在の日本ではこうした恩恵が殆ど見えません。

まして、50年前の北欧に比べて、圧倒的に情報セキュリティのリスクが報じられるようになっています。しかも、この低金利、低利回りです。面倒な登録義務を回避するべく、一旦金融機関の口座からお金を引き出すという意図せぬ結果をもたらすかもしれません。

証券業界に身をおくものとして、政府の一層の対応を切に願うところです。

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