アナリスト夜話(やわ)

大槻 奈那

チーフ・アナリスト大槻 奈那が、金融市場でのさまざまな出来事を女性目線で発信します。

大槻 奈那 プロフィール

第38回 コインチェック問題の行方

ついに来てしまった、と思った人もいたのではないでしょうか。なかなか交換所の登録ができないことが不安視されていたコインチェックが、1/26に仮想通貨NEMの紛失を発表しました。

損失は発表時点の時価で約580億円(補償額は460億円)。NEMの世界時価総額が1兆円程度なので、その約5%もの金額がハックされた計算になります。

これまでも、世界の仮想通貨交換所のハッキング被害は相次いでいます。先月19日には、韓国のYoubitがハッキングで自社の預かり資産の17%を失い、親会社のYapianが破産を申請しました。補償を発表したコインチェックと異なり、Youbitは顧客資産を25%カットすると発表しています。

ハッキングの深刻さが改めて浮彫りになった今回の事件で、仮想通貨市場はどうなっていくのでしょうか。金融庁は今日コインチェックの行政処分を発表すると報じられています。さらに、全ての仮想通貨交換業者のサイバー対策、顧客保護体制等の再点検を求めることになるでしょう。

しかしそれだけでは、市場が落ち着くとは思えません。本来は、各社のサイバー対策のさらなる充実が最も重要だと思いますが、外からは安全性はなかなか見えにくいのが問題です。このため、市場の安心に向けてのカギを握るのは、顧客保護の仕組み作りだと思います。既にビットフライヤーは、三井住友海上とともにサイバー保険を提供しています。コインチェックも、昨年6月に損保会社と共同で不正ログイン損失補償の仕組みを発表していましたが、まだ開始していませんでした。

また、三菱UFJ信託が4月にも仮想通貨資産を受託することで保有者保護を図ると報じられていますが、その動向も注目されます。

いずれにしても、これらの整備には時間がかかりそうです。それまでの間、投資家として取れる対策としては、様子見とするのか、あるいは、できるだけ正確な情報を集め、相対的に安心なルートで取引をすることでしょう。

「なぜコインチェックがいいの?」というCMでは、その答えが示されませんでしたが、さまざまな仕組みが確立するまでは、各投資家がそれぞれ「なぜこの取引所にするのか?」を慎重に検討することが求められるでしょう。

【お知らせ】「メールマガジン新潮流」(ご登録は無料です。)

チーフ・ストラテジスト広木 隆の<今週の相場展望>とコラム「新潮流」とチーフ・アナリスト大槻 奈那が金融市場でのさまざまな出来事を女性目線で発信する「アナリスト夜話」などを毎週原則月曜日に配信します。メールマガジンのご登録はこちらから

コラムをお読みになったご感想・ご意見をお聞かせください。
ご質問の場合は、「コラム名」を明記のうえ、以下より投稿してください。

過去のコラム


マネックスレポート一覧

当社の口座開設・維持費は無料です。口座開設にあたっては、「契約締結前交付書面」で内容をよくご確認ください。
当社は、本書の内容につき、その正確性や完全性について意見を表明し、また保証するものではございません。記載した情報、予想および判断は有価証券の購入、売却、デリバティブ取引、その他の取引を推奨し、勧誘するものではございません。過去の実績や予想・意見は、将来の結果を保証するものではございません。
提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更または削除されることがございます。当社は本書の内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではございません。投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。本書の内容に関する一切の権利は当社にありますので、当社の事前の書面による了解なしに転用・複製・配布することはできません。内容に関するご質問・ご照会等にはお応え致しかねますので、あらかじめご容赦ください。