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◆先週金曜は、中国株価の反発継続に加えて、ギリシャ支援問題で週末のEU首脳会合で合意に至るとの期待感が急速に高まったことから、ユーロやポンドが上昇したほか、米中長期債利回りの上昇と共にドル/円がほぼ一本調子に上昇し一時122.88円と、先週末のギリシャ国民投票結果判明前の水準をほぼ回復した。
◆本日早朝には、ギリシャ第3次支援に関して、ドイツやフィンランドを中心に反対が強かったことから週末のユーロ圏財務相会合で合意に至らず、交渉開始にはギリシャが15日までに年金や税制などの改革案を法制化すべきとしたことから、先週金曜の楽観が一転し、ドル/円は一時121.93円へ1円程度、ユーロ/ドルは1.11ドル台半ばから1.11ドル割れへ、ユーロ/円は137円丁度近辺から一時135.42円へ急反落した。
◆もっとも、最終的には何らかの合意に至るとの楽観論も依然根強いとみられ、ドル/円は122円台半ばへ、ユーロ/円は136円台へ反発して推移している。
◆本日はユーロ圏首脳会合の結果を確認する必要があるが、合意先送りや、支援条件を満たせない場合の5年間の一時的ユーロ圏離脱案を出してきたドイツの強硬姿勢の明確化でも市場の楽観論は崩れていない。GREXITはない、という前提の下、市場は悪材料が出た場合のリスクオフよりも、ギリシャ残留決定後のリスクオン相場に乗り遅れることをより強く懸念しているようだ。ギリシャ改革案法制化の期限である15日を待たずに、ドル/円は123円乗せもありそうな情勢となってきた。
中国株安の沈静化とギリシャ期待で楽観論が急速に台頭
ドル/円は、東京時間早朝(欧州時間深夜)にギリシャ政府が週末のEU首脳会合前に新たな提案を期限前に提出したことがまず好感され、121.30円近辺から121円台後半へ上昇して始まった。その後、中国株価が続伸して始まると、122円乗せとなった。欧州時間入り後も、ギリシャ新提案提出と中国株価の続伸が好感されるかたちで、米中長期債利回りの上昇と共にほぼ一本調子で上昇し、一時122.88円に達した。8日の中国株安を受けた下落前の水準(122円台半ば)、および先週末のギリシャ国民投票結果判明前の水準をほぼ回復したかたちとなった。
9日のギリシャ新提案を巡っては、フランス政府やトロイカ(EU、ECB、IMF)実務者らは前向きな評価を下したとされ、これも市場センチメント押上げ要因となった一方、ドイツ政府は判断を留保、対ギリシャ追加支援に前向きではない姿勢が示されたかたちだったが、市場は無視していた。
なお、Yellen米FRB議長は年内利上げ開始が妥当とする一方、労働市場の緩みが残存している点も指摘し、9月利上げ開始に確約を与えた訳ではないが、ギリシャが市場の焦点となる中で市場の反応は殆どみられなかった。
ユーロ/ドルもギリシャ支援に向けた楽観的な見方の強まりを反映したとみられ上昇基調となり、アジア時間に1.1050ドルから1.11ドル乗せへ上昇、欧州時間入り後に続伸し一時1.1216ドルの高値を付けた。ドイツ10年債利回りも0.2%ポイント近く急上昇し0.90%近辺となっており、ギリシャ危機後退は好材料だがユーロと金利の上昇はECB量的緩和政策の限られた政策効果波及経路(ユーロ安、金利低下)を阻害しており、ユーロ圏景気の面からは必ずしもプラスではない。
ユーロ/円も、ドル/円とユーロ/ドルの両方が上昇する中で、133円台後半から一時137.29円へ大幅に上昇した。
豪ドル/米ドルも、アジア時間午前中はギリシャ新提案への安堵や中国株価の続伸を好感して強含みとなったが、上昇は0.74ドル台半ばから0.75ドル手前までと非常に限定的に留まり、むしろNY時間の原油安につれたかたちで一時0.7410ドルへ反落した。豪州にとって重要な鉄鉱石価格は反発したようだが、原油を始め、銅などその他のコモディティ価格の上昇は限定的となっており、中国株安の景気への悪影響懸念は拭い去られた訳ではないようだ。
豪ドル/円は、米ドル/円の上昇が大きかったことからつれ高となり、欧州時間にかけて90円台半ばから一時91.79円へ上昇した後、原油安・豪ドル安の影響を受けて91円台前半へ小反落している。
きょうの高慢な偏見:リスクオン相場への乗り遅れ懸念?
ドル/円は、本日早朝には、ギリシャ第3次支援に関して、ドイツやフィンランドを中心に反対が強かったことから週末のユーロ圏財務相会合で合意に至らず、交渉開始にはギリシャが15日までに年金や税制などの改革案を法制化すべきとしたことから、先週金曜の楽観が一転し、一時121.93円へ1円程度急反落した。もっとも、最終的には何らかの合意に至るとの楽観論も依然根強いとみられ、ドル/円は既に122円台後半へ反発して推移している。
ユーロ圏首脳会合の結果を確認する必要があるが、合意先送りや、支援条件を満たせない場合の5年間の一時的ユーロ圏離脱案を出してきたドイツの強硬姿勢の明確化でも市場の楽観論は崩れていない。GREXITはない、という前提の下、市場は悪材料が出た場合のリスクオフよりも、ギリシャ残留決定後のリスクオン相場に乗り遅れることをより強く懸念しているようだ。ギリシャ改革案法制化の期限である15日を待たずに、ドル/円は123円乗せもありそうな情勢となってきた。
ユーロもドル/円と同様、本日早朝にギリシャ第3次支援に関して週末のユーロ圏財務相会合で合意に至らず、交渉開始にはギリシャが15日までに年金や税制などの改革案を法制化すべきとしたことから、先週金曜の楽観が一転し、対ドルで1.11ドル台半ばから1.11ドル割れへ、対円は137円丁度近辺から一時135.42円へ急反落した。もっとも、最終的には何らかの合意に至るとの楽観論も依然根強いとみられ、特に対円は136円台へ反発して推移している。但し、独米10年金利差の観点からは、両方の利回りが同程度に動くとみられることから、引き続き強い方向感は出ない状況が続きそうだ。
豪ドル/米ドルは、先週金曜の市場の楽観論の高まりでも上昇が限定的だったのと同様に、週末にギリシャに関して合意できなかったことに対する失望でも下落は僅かで、0.7450ドル近辺から0.7412ドルへの軟化に留まった。このため、豪ドルはどちらかというと中国関連材料への反応の方が大きいと見られ、中国株価および中国6月輸出入統計が注目される。市場では輸出が前年比+1.0%、輸入が-15.5%といずれも前月から改善が予想されているが、特に輸入が市場予想を下回る場合には、再び売り圧力が強まりそうだ。
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