<ポイント>
◆昨日は、週明け早朝の時点ではギリシャ第3次支援に関して日曜夜のユーロ圏首脳会合が終わっておらず、合意が遅延するとの懸念から先週末の楽観が一転し、ドル/円は一時121.93円へ1円程度、ユーロ/ドルは1.11ドル台半ばから1.11ドル割れへ急反落していたが、最終的な合意への楽観論も根強くすぐに反発、そして欧州時間入り後にようやく首脳会合で第3次支援協議開始に向けた条件で合意に至ったことから、米中長期債利回りが上昇しドル/円は123円台半ばへ急上昇した。
◆他方、ユーロ/ドルは合意報道直後には上昇したが、ドイツ10年債利回りが低下に向かったことからその後すぐに反落に向かい、一時1.10ドル割れとなった。
◆結局、ギリシャ合意で恩恵を受けたのはユーロではなく、ドルとトルコリラやブラジルレアルなどの新興国通貨だった。
◆本日は、昨日のギリシャ合意を受けた米中長期債利回りの上昇の余韻がどこまで続くか、および米小売売上高が注目される。市場の悲観論の後退継続と米小売売上高の予想比上振れが重なれば、124円乗せもありそうだ。
だいさんじ(第三次)支援でだいさんじ(大惨事)回避
ドル/円は、週明け早朝の時点ではギリシャ第3次支援に関して日曜夜のユーロ圏首脳会合が終わっておらず、合意が遅延するとの懸念から先週末の楽観が一転し、ドル/円は一時121.93円へ1円程度、ユーロ/ドルは1.11ドル台半ばから1.11ドル割れへ急反落した。もっとも、最終的な合意への楽観論も根強くすぐに反発、東京時間は概ね122円台半ばで推移した。そして欧州時間入り後に17時間の協議の末ようやく首脳会合で第3次支援協議開始に向けた条件で合意に至ったことが判明すると、米中長期債利回りの上昇と共にドル/円は一時123.54円へ急上昇した。
ユーロ/ドルも、週明け早朝の時点では合意遅延への懸念から1.11ドル台半ばから1.11ドル割れへ急反落していたが、最終的な合意への楽観論も根強くすぐに反発、非常に小幅な反応に留まった。そして欧州時間入り後に合意が伝わると、発表直後にはドイツ10年債利回りの上昇と共に1.11ドル台半ばから1.12ドル丁度手前まで上昇した。もっとも、その後ドイツ10年債利回りが1%台乗せに失敗し反落に向かい、上昇する米10年債利回りとの方向の違いが鮮明になると、1.11ドル割れへ急反落し、NY時間にかけてじり安が続き一時1.0996ドルと1.10ドル割れとなった。
ユーロ/円も、週明け早朝に137円丁度近辺から136円割れへ下落した後、欧州時間入り後の合意報道を受けて一時137.80円へ上昇する局面もみられたが、ユーロ/ドルと共に136円割れへ反落した。
豪ドル/米ドルも、アジア時間午前中はギリシャ新提案への安堵や中国株価の続伸を好感して強含みとなったが、上昇は0.74ドル台半ばから0.75ドル手前までと非常に限定的に留まり、むしろNY時間の原油安につれたかたちで一時0.7410ドルへ反落した。豪州にとって重要な鉄鉱石価格は反発したようだが、原油を始め、銅などその他のコモディティ価格の上昇は限定的となっており、中国株安の景気への悪影響懸念は拭い去られた訳ではないようだ。
豪ドル/米ドルは、週明けのギリシャ合意遅延への失望売りは殆ど見られず、むしろ中国6月輸出入統計で輸出、輸入いずれも市場予想を上回る伸びとなったことから(前年比:輸出+2.1%、輸入-6.7%)0.7469ドルへ上昇する局面も見られた。もっとも、欧州時間入り後には、ギリシャ合意を受けた米ドル高圧力で反落、一時0.7383ドルへ下落した。 豪ドル/円は、豪ドル/米ドルの下落よりも米ドル/円の上昇の方が大きかったことから、週明けに91円台半ばから一時90.51円へ下落した後は反発、一時91.88円の高値をつけた。但し上昇は限定的に留まっている。
きょうの高慢な偏見:ユーラシアから北米へ
ドル/円は、昨日のユーロ圏首脳会合での合意からくる目先のGREXITリスク後退を受けた米中長期債利回りの上昇の余韻がどこまで続くか、および米小売売上高が注目される。市場の悲観論の後退継続と米小売売上高の予想比上振れが重なれば、124円乗せもありそうな情勢だ。現時点で市場ではコア小売売上高(除く自動車、ガソリン、建築資材)につき前月比+0.3%の伸びが予想されている。
ユーロ/ドルは、GREXITリスク後退でもドイツ10年債利回りはむしろ1%乗せに失敗した後反落しており、上値が重い。こうした中、本日発表予定のドイツ7月ZEW期待指数が4か月連続悪化の見通しになっていることから(前月31.5、市場予想29.0)、更に下押し圧力がかかりそうだ。但し、ECB金融政策は当面据え置きと見られる中、16日予定のECB定例政策理事会でも特に政策変更は予想されておらず、ユーロ圏経済指標に対する市場の反応はあまり大きなものとはなりそうにない。引き続き、ユーロ/ドルは5月以降の1.08-1.14ドルのレンジ内で方向感のない展開となりそうだ(ユーロ見通しについては、7月9日付当社投資戦略テーマ「EUR:買うべきか買わざるべきか」を参照)。
豪ドル/米ドルは、本日発表の豪NAB企業景況感・信頼感の改善傾向が続けば、RBA利下げ期待の後退から下支え要因となる。もっとも、GREXITリスク後退を受けた米中長期債利回りと米ドルの上昇圧力もあって下落モメンタムが強まっていることから上値は重いと見られ、年初来安値(7月8日の0.7372ドル)更新と0.73ドル丁度方向を試す展開が続きそうだ。
ポンド関連では、英6月総合CPIの発表が予定されており、市場予想では再び前年比ゼロ%へ鈍化する見込みで、BoE利上げ期待後退からポンド安要因となる。もっとも、CPI低下の主因が原油安であれば、原油安のより長期的な景気刺激効果を考慮すれば必ずしも利上げを遅れさせる要因とはならず、英金融政策見通しにあたっては今週発表のGDP成長率や週平均賃金の伸びの方がより重要となりそうだ。ポンドの対ユーロ、対ドルでの上昇基調は崩れていない。
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