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◆昨日は、米小売売上高の予想比下振れを受けてドルが下落する局面があったが、対円、対ユーロでドルはすぐに反発した。ドル/円は米小売売上高発表後に一時122.92円へ反落したが、すぐに123円台前半を回復しており、上昇基調一服と共に、下値の堅さも示されている。
◆BoEからタカ派的な発言が相次いでおり、ポンドが大きく上昇した。
◆本日は、中国の2QGDPなど主要経済指標発表、日銀金融政策決定会合、英週平均賃金、Yellen議長半期議会証言、米コアPPI・NY連銀製造業景況指数・鉱工業生産、およびカナダ中銀金融政策決定などが予定されている。
◆米経済指標は概ね改善予想、英週平均賃金は上昇加速が予想され、米ドル高・ポンド高要因である一方、カナダ中銀は25bpsの利下げ予想、日銀は政策据え置きながら中間評価で成長率下方修正の可能性、中国経済指標はGDPを中心に減速方向となっており、カナダドル安・円安・豪ドル安圧力となりそうだ。豪ドルはカナダドルへのつれ安の側面も加わりそうだ。
◆ドル/円は、124円台では本邦政府・日銀の円安牽制リスクが意識され易いほか、Yellen議長が実体経済の回復にも拘らず低調なインフレを指摘しハト派的な内容となるリスクがあり、ここ数日のリスクオフのオフからくる買戻し相場の一服感が強まりそうだ。
米小売売上高の下振れからくるドル安は一時的に留まる
ドル/円は、GREXIT懸念後退を受けた買い戻し基調の継続から東京時間朝方に一時123.73円へ続伸する局面がみられた。もっとも、その後は米中長期債利回りの上昇が一服する中で小反落し、概ね123円台半ばで推移した後、NY時間に発表された米6月小売売上高が総合で前月比-0.3%、コアも-0.1%と予想外のマイナスとなったことから、一時122.92円へ反落した。その後、米中長期債利回りは低下したままだったものの、ドル買戻しが入り123円台前半を回復するなど、上昇モメンタムが一服したと同時に、下値の堅さも示されたかたちとなった。
ユーロ/ドルも、ドル高地合いの継続から欧州時間にかけて一時1.0966ドルへ続落した。もっとも、その後は反発し、米小売売上高の予想比下振れを受けたドル安により続伸、一時1.1083ドルの高値をつけた。但し上昇は続かず、その後再び1.10ドル丁度近辺へ反落して引けており、結局前日終値の水準に戻るなど、ユーロ/ドルは方向感のない展開が続いている。
ユーロ/円も概ねユーロ/ドルと連動して動き、欧州時間にかけて135.29円へ下落した後、米小売売上高発表に向けて136.41円の高値をつけたが、引けにかけては前日終値の水準である135.80円近辺へ反落、結局強い方向感のない横這いの動きとなった。
豪ドル/米ドルは、豪6月NAB企業景況感、信頼感が各々11、10といずれも前月から改善し企業センチメントの改善傾向が続いたことが示されたことから、0.74ドル丁度近辺から0.7430ドル程度へ上昇、そして米小売売上高の予想比下振れを受けた米ドル安も手伝って、0.7479ドルへ続伸した。但し7月初までの安値だった0.75ドルは回復しておらず逆に上値レジスタンスとなっており、豪ドル下落基調は変わっていない。
豪ドル/円も豪ドル/米ドルと同様の動きとなり、91円台半ばから一時92円丁度へ上昇した。
ポンドは、Carney英中銀総裁が議会証言で利上げを開始する時点が近づきつつある、と述べたことから、早期利上げ開始期待が高まり、対ドルで1.54ドル台前半から1.5639ドルへ、対円で191円から192.96円へ2円近く上昇した。昨日はMiles英中銀金融政策委員も、正常化の時期が近づいている、米国を待つ必要はない、と述べるなど、BoE高官からはタカ派的な発言が相次いでいる。
きょうの高慢な偏見:オタワからシドニー、ワシントンへ?
ドル/円関連では、本日は日銀金融政策決定会合およびYellen議長議会証言(21:30)、コアPPI、NY連銀製造業景況指数および鉱工業生産などが予定されている。米経済指標は概ね改善方向が予想されているほか、日銀は政策据え置きながら中間評価で15年度成長率の下方修正の可能性が指摘されており、ドル高円安要因がある。もっとも、124円台では本邦政府・日銀の円安牽制リスクが意識され易いほか、Yellen議長が実体経済の回復にも拘らず低調なインフレ率(コアPCEデフレータ、平均自給など)を指摘するハト派的な内容となるリスクがあり、124円乗せを見ずに再び123円割れとなりそうだ。ここ数日のリスクオフのオフからくる買戻し相場の一服感が強まりそうだ。
ユーロ/ドルは、明日15日にギリシャ議会の重要改革案の法制化期限を迎え、政府は法案を既に議会に提出、賛成多数での可決が予想されていることから波乱材料となる可能性は低そうで、ドルの方向性に支配されそうだ。米経済指標の改善方向が確認されれば、ドル高材料の一方、Yellen議長発言のハト派リスクはドル安要因で、結局今年5月以降の1.08-1.14ドルのレンジ内で方向感がない展開が続きそうだ。
豪ドル/米ドルは、下落基調が続く中で、中国主要経済指標、特に2QGDPの予想比下振れの場合の続落リスクが大きい。市場では中国2QGDPにつき、前期の前年比+7.0%から+6.8%への減速が予想されているが、6%台への減速は今年の中国政府の目標(+7.0%程度)未達を意味する。政府・中銀の追加景気刺激策の可能性が高まる一方、目標未達の未然防止に失敗した事態も露呈していることになる。最近の中国株式市場を巡る政府の行き過ぎた介入姿勢と相俟って、中国の経済政策運営に対する信頼が徐々に低下しており、これも豪ドルにとってはネガティブな要因となる。
更に、コモディティ輸出国として豪州と同列に議論されることも多いカナダでは原油安の中で、カナダ中銀(在オタワ)が僅差ながら0.50%への25bps利下げ期待がやや優勢となっており(Bloomberg集計では利下げ16人、据え置き13人)、実際に利下げに踏み切る場合には十分に織り込まれておらずカナダドル安となりやすく、更に豪RBAの利下げ期待を高め豪ドルがつれ安となり易そうだ。このところ、NZドルはそうでもないがカナダドルと豪ドルの連動性は非常に高まっている。
ポンド関連では、BoEの今後の利上げ決定にとって最も重要な経済指標の一つである週平均賃金が発表される。市場では総合が前年比+2.7%から+3.3%へ、賞与を除く分でも+2.7%から+3.0%へ更に加速する予想となっており、労働市場の引き締まりが賃金上昇圧力に繋がっている証左が強まることから、昨日のCarney総裁のタカ派発言と相俟って、市場の利上げ開始早期化期待と共にポンド続伸に繋がりそうだ。
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