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◆昨日は、ギリシャ問題でユーロ圏が70億ユーロのつなぎ融資を決定し来週初の国債償還資金を確保し、ECBもギリシャ向け緊急流動性支援を9億ユーロ拡大するなど、ギリシャを巡るリスクが更に後退する中で、米中期債利回りの上昇と共にユーロではなくドルが概ね小幅全面高となったのが特徴的だった。
◆こうした中、ドル/円がまちまちな米経済指標にも拘らず123円台後半から一時124.18円へじり高となったほか、ユーロ/ドルは1.09ドル台半ばから1.0856ドルへ下落した。
◆本日は、米住宅着工・建設許可、米コアCPI、カナダコアCPIなどが発表予定となっている。ドル/円はリスク回避後退傾向が下支えとなる中で、米コアCPIの上昇が確認されれば下支えされようが、Fedが最も重視しているコアPCEデフレータとの連動性が最近低下しているため、市場の反応は限定的となるかもしれない。124円台半ばは黒田総裁が円安牽制発言を行った水準でもあり、124円丁度近辺でもみ合いとなりそうだ。
チプラス勝利でドル高
ドル/円は、ギリシャ問題でギリシャ議会が改革案の法制化に成功したことを受けて、ユーロ圏が70億ユーロのつなぎ融資を決定し来週初の国債償還資金を確保し、ECBも定例政策理事会ギリシャ向け緊急流動性支援を9億ユーロ拡大するなど、ギリシャを巡るリスクが更に後退する中で、米中期債利回りの上昇と共にドルが概ね小幅全面高となる中、123円台後半から一時124.18円へじり高となった。この間、米経済指標は新規失業保険申請件数は28.1万人と前週および市場予想を若干下回る良好な結果だった一方、フィラデルフィア連銀製造業サーベイは5.7と前月および市場予想を大きく下回った。
ユーロ/ドルも、ギリシャ懸念が後退する中で、ドイツ利回りよりも米利回りの方が上昇が大きかったことから、金利差の面からユーロ売りドル買い圧力がかかり、1.09ドル台半ばから一時1.0856ドルと、5月27日の直近安値である1.0819ドルに近づいた。 ユーロ/円は、対ドルでユーロの方が円よりも下落が大きかったことからじり安となり、135円台半ばから134.75円へ軟化した。
豪ドル/米ドルは、前日に続きNZドルの急落が続く中で、アジア時間はつれ安となり一時0.7350ドルと年初来安値を更新した。もっとも、その後は中国株価の持ち直しなどを眺め買戻しが入り、一時0.7437ドルへ反発した。 豪ドル/円は、米ドル/円の上昇と豪ドル/米ドルの上昇の両方が効いたかたちとなり、91円台前半から92.21円へ上昇、前日の下落分をほぼ取り戻したかたちとなった。
きょうの高慢な偏見:米国のインフレーターは問題ないか?
ドル/円は、ギリシャ問題の進展を受けたリスク回避後退傾向が下支えとなる中で、材料面では米コアCPIが注目となる。前年比+2%に向けた上昇が確認されれば下支えされようが(前月+1.7%、市場予想+1.8%)、最近はFedが最も重視しているコアPCEデフレータとの連動性が低下しているため、コアCPIが市場予想を上回っても市場の反応は限定的かもしれない。実際、米国のインフレ・賃金指標は足許まちまちの動きとなっており、上昇でも利上げ開始の材料としては弱そうだ。124円台半ばは黒田総裁が円安牽制発言を行った水準でもあり、ここからのドル続伸には強力な追加材料が必要だが、それがなければ124円丁度近辺でもみ合いとなりそうだ。
ユーロ/ドルもドルの材料に左右され易い展開が続きそうだ。コアCPIや住宅着工が良好な結果となれば小幅なユーロ安ドル高圧力となり、5月27日の直近安値である1.0819ドルが視野に入りそうだ。なお本日はドイツでギリシャ支援に向けた交渉に関して審議が行われるが、賛成多数となる可能性が高いとみられ波乱要因とはならなそうだ。ドイツを含む各国議会の承認を経て、ユーロ圏財務相が電話会議を開催、支援協議開始となる。
豪ドル/米ドルは昨日持ち直したものの5月後半以降の下落基調に変化はなく、中国株価が続落したり、原油価格の続落を受けてカナダドルなどコモディティ通貨が続落するようだと、つれ安となりそうだ。
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