<ポイント>
◆昨日は、最近の動きが反転し、原油などコモディティ価格の反発および米株安・米利回りの低下と共にドルが対主要通貨でほぼ全面安となった。
◆ドル/円はこうした動きに加えて、黒田日銀総裁がインフレが向こう数か月間に加速し、現時点で追加緩和は不要との見解を述べたことも、円買戻し材料となり、一時は124.48円へ続伸していたが123.76円へ反落した。
◆本日は、豪2QCPI、南ア6月CPI、英BoE議事要旨、米6月中古住宅販売件数、そして明朝6:00にRBNZ金融政策決定が予定されているなど、今週最も重要イベントが多い日となる。 ◆特に翌朝のRBNZが最も相場を動かし易く、25bps追加利下げが幅広く予想されている中、利下げ幅が50bpsとなったり目先の追加利下げが示唆されるとNZドルが再び下落に向かう一方、追加利下げが示唆されないとNZドルは大幅に続伸しそうだ。
◆南アCPIでは、コアCPIがインフレ目標上限の6%に更に接近すると、明日予定される南ア準銀会合で利上げが行われる可能性が更に高まり、ランド高となりそうだ。
◆BoEはタカ派発言が相次いでいる中で、今回発表の議事要旨で利上げ票が投じられていたことが確認されると、ポンド高に繋がりそうだ。
◆こうした中、ドル/円は市場の焦点ではないが、昨日124円台半ばで再び黒田総裁から追加緩和消極発言が聞かれたことから、改めて124円台半ばでの上値の重さが意識されそうで、124円丁度近辺でのもみ合いとなりそうだ。
「黒天井」アゲイン
ドル/円は、欧州時間まではドル高地合いが継続し、一時124.48円へ続伸した。もっとも、その後NY時間にかけては米株価が下落して始まり、米中長期債利回りも低下に向かいドルが対主要通貨で全般的に反落基調となったことに加えて、黒田日銀総裁がバンコクで、インフレが向こう数か月間に加速するとの見通しに加えて、現時点で追加緩和は不要との見解を述べたことも円買戻し材料となり、123.76円へ反落した。日銀は先週発表の金融経済月報で、インフレ指標として従来のCPI除く生鮮食品、10%刈り込み平均や除く食料・エネルギーに加えて「除く生鮮食品・エネルギー」という新たなコア指標を使用、これは直近で前年比+0.7%へ上昇してきていることを太線で強調するなど、原油の影響を除けばインフレ率が上昇基調にあり、追加緩和が必要ないことを示しており、今回の発言と整合的といえる。また、今回もちょうど6月10日に円安牽制発言が行われたのと同水準の124円台半ばで事実上の円安抑制発言が繰り返されたことから、124円台半ばはますます「黒天井」として意識されそうだ。
ユーロ/ドルも、早朝に1.0809ドルと直近安値へ続落した後、全般的なドル反発基調に加えて、ドイツ10年債利回りの反発もあって、一時1.0969ドルへ急反発した。
ユーロ/円も、対ドルでのユーロ反発の方が円の反発よりも大きかったことから、134円台半ばから135.76円へ反発した。
豪ドル/米ドルは、豪RBA議事要旨では特段目新しい内容はなかったが、従来からの豪ドルの更なる下落の必要性への指摘が見られたことを受けてか発表後に下落に向かい、0.7341ドルの安値をつけた。但しその後は原油価格の反発や全般的な米ドル反落基調を受けて、0.7450ドルへ大幅反発した。
豪ドル/円も91円台前半へ弱含みとなった後、92.26円へ大幅反発した。
きょうの高慢な偏見:ヨハネスブルグ・ロンドン対ウェリントン
ドル/円は、本日から明日早朝にかけては豪2QCPI、南ア6月CPI、英BoE議事要旨、米6月中古住宅販売件数そしてRBNZ金融政策決定など重要イベントが多い中で市場の焦点ではないが、昨日124円台半ばで再び黒田総裁から追加緩和消極発言が聞かれたことから、改めて124円台半ばでの上値の重さが意識されそうで、124円丁度近辺でのもみ合いとなりそうだ。米経済指標では6月中古住宅販売が発表予定で、540万件へ更に増加する見通しとなっておりドル下支え材料だが、利上げ開始タイミングに影響力が大きい指標では必ずしもないため、市場の反応は限定的かもしれない。
ユーロ/ドルは、一旦下落基調が一服したことから、目先は1.08ドル丁度がサポート水準として意識され易くなったとみられ、ドル高トレンドが再開するまでは1.08-1.13ドルでのもみ合いとなりそうだ。
豪ドル/米ドルは、NZドルやカナダドルなど他のコモディティ通貨と連動しやすい状況が続いている。こうした中、明日早朝(6:00)に結果が出るNZ準銀(RBNZ)金融政策決定で、既に幅広く予想されている25bpsの追加利下げだけでなく先行きの追加利下げも示唆されたり、50bpsの大幅利下げとなれば、NZドルの下落再開に連れ安となって再び下落基調となりそうだ。下値は20日につけた年初来安値である0.7328ドルが目処となる一方、0.75ドル丁度を上抜けすると豪ドル売りポジションの巻き戻しがかさみ、豪ドル反発が加速しそうだ。
なお、本日発表の豪2QCPIについては、総合は前期の+1.3%から+1.7%への大幅上昇予想の一方、RBAが重視しているコアインフレ率(刈り込み平均と加重中央値の平均)は+2.3%で前期から横這いかつRBAのインフレ目標レンジ(+2.0~3.0%)に収まる見込みであることから、目先のRBA金融政策には大きな影響がなさそうだ。但し、豪ドル安基調の中で、インフレ率が市場予想を下回る場合には豪ドル安が加速する可能性はある。
NZドルは明朝6:00結果発表のRBNZ金融政策決定への注目度が高まっている。既に25bps追加利下げが幅広く予想されている中、利下げ幅が50bpsとなったり今後の追加利下げが明確に示唆されると、昨日Key首相発言(NZドルは想定より速く下落した)を受けて買い戻されていたNZドルは再び下落に向かうとみられる。一方、25bps利下げに留まり、追加利下げが示唆されないとNZドルは大幅に続伸するリスクがある。なお、市場では今年10-12月期に向けてRBNZが現在3.25%の政策金利を2.75%程度へ更に引き下げるとの見方がコンセンサスとなっており、一部に2.50%への利下げを予想する向きも増えているようだ。
ポンドは、6月以降BoE高官のタカ派発言が相次ぐ中で、本日発表の7月MPC議事要旨で既に利上げ票が投じられていたことが明らかになれば続伸しそうだ。特にユーロ/ポンドは年初来安値(ポンド高値)の更新が続き2007年以来の水準となっておりテクニカル的にも下落し易い(英金融政策およびポンド見通しについては7月16日付投資戦略テーマ「GBP:大西洋よりドーバー海峡」を参照)。ポンド/円も年初来高値である195.88円が視野に入る。
BoE金融政策委員のうち、昨年後半にも利上げを主張していたWeale、McCafferty両委員や、Miles委員もタカ派として知られており、他の委員らに先駆けて利上げ票を投じ始める可能性が高い。
南アランドは明日予定される南ア準銀(SARB)金融政策会合での利上げの有無が焦点となる中で、本日発表の南ア6月CPIで、総合CPIの大幅上昇見通し(前月+4.6%→市場予想+5.0%)に加えて、コアCPIがインフレ目標上限の6%に更に接近すると(前月、市場予想ともに+5.7%)、利上げが行われる可能性が更に高まり、ランド高に繋がりそうだ。
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