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◆昨日は、人民元基準値が1.6%下落し、2日連続の元安となったことで、アジア時間中は円や豪ドル、アジア通貨がつれ安となった。もっとも、人民銀が中国市場引けにかけて元買い介入を行ったとみられ、元安が今後限定的になるとの見方が広まったためか、欧州時間入りにかけてはそれまで売られていた円、豪ドル、アジア通貨などが買い戻され、ドルが総じて反落した。
◆ドル/円は、元続落を受けて125.28円へ続伸した後、欧州時間に急反落し、NY時間に一時123.79円の安値をつけた。前日より先行して縮小していた米日2年債利回り格差にキャッチアップしたという面もある。
◆本日も引き続き人民元基準値での元続落如何が焦点となるほか、米小売売上高やECB議事要旨が発表される。昨日の相場反転で人民元に対する市場の反応は一筋縄では行かなくなっている。元基準値が続落すれば、ドル/円には再び上昇圧力がかかる一方、元安が小幅に留まったり元高となっても、世界株安一服、米利回り持ち直しでドル/円は下支えされるかもしれない。米小売売上高の予想通りの回復も、やや後退した米利上げ期待を再び高め、ドル下支え材料となりそうだ。
昨日までの世界:連日の元安でリスク回避が強まり、ポジション調整に
ドル/円は、東京時間10:15分頃発表の人民元基準値が1.6%下落し、2日連続の元安となったことで、アジア時間中は円や豪ドル、アジア通貨がつれ安となる中、125.28円へ続伸した。もっとも、東京時間午後にはドルが反落し始め、また人民銀行が中国市場引けにかけて元買い介入を行ったとの報道もあって、今後は元安が限定的になるとの見方が出たためか、欧州時間入りにかけては逆にそれまで売られていた円、豪ドル、アジア通貨などが買い戻され、ドルが総じて反落、ドル/円はNY時間に一時123.79円の安値をつけた。
なお、前日より先行して縮小していた米日2年債利回り格差にキャッチアップしたという面もあり、金利差から見ると124円前後の水準は妥当、ということになる。
ユーロ/ドルは、中国関連材料への敏感な反応はみられなかったが、NY時間にかけて一貫して上昇基調となり、1.10ドル台半ばから一時1.1214ドルと、7月10日以来の1.12ドル台となった。人民元を巡ってアジア通貨、コモディティ通貨、ドルが動揺する中で、ユーロが避難通貨として捉えられている面があるのかもしれない。
ユーロ/円は、対ドルでの円高よりもユーロ高の方が大きかったことから、ユーロ/ドルほどではないがじり高基調となり、138円台前半から一時138.86円へ上昇した。
豪ドル/米ドルは、人民元基準値公表後、銅や原油などコモディティ価格の下落と共に大幅に下落し、0.73ドル台から0.7216ドルの安値をつけた。もっとも、欧州時間にかけては、コモディティ価格の反発もあって急速に買い戻され、0.74ドル丁度手前まで急反発した。
豪ドル/円も同様に、91円台半ばから一時90.35円へ下落した後、91円台後半へ反発している。
きょうの高慢な偏見:元安は一服するか?
ドル/円は、引き続き人民元基準値での元続落如何がまず焦点となるが、昨日の反転を受けてドル/円の反応は一筋縄では行かなくなったかもしれない。元基準値が続落すれば、ドル/円には再び上昇圧力がかかる一方、元安が小幅に留まったり元高となっても、世界株安一服、米利回り持ち直しでドル/円は下支えされるかもしれない。
なお、本日は米景気の回復力を見る上で鍵となる小売売上高の発表が予定されており、総合が前月比+0.6%、コア(除く自動車、ガソリン、建築資材)が同+0.5%の予想となっており、市場予想程度の回復であれば、元安でやや高まっていた利上げ先送りリスクが後退し、ドル下支え要因となりそうだ。
ユーロ/ドルは、もし人民元に端を発する市場の動揺で下支えされているとすれば、元基準値続落の場合は上昇圧力がかかる一方、元安に一服感が出る場合には反落する、という展開が予想される。
豪ドル/米ドルは、元が続落すると再び下落圧力がかかりそうだが、元安が一服すると中国景気減速への懸念も後退し、豪ドルが下支えされそうだ。
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