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◆昨日は、原油などコモディティ価格の下落を受けてカナダドル、NZドルや豪ドルが下落、対価として米ドルが上昇したが、FOMC議事要旨内容がハト派的との受け止め方からその後米ドルが反落したのが特徴的だった。
◆ドル/円は、米コアCPIの小幅下振れでも124円台前半で持ちこたえていたが、米株安やFOMC議事要旨がハト派的との受け止め方から下落し、一時123.69円の安値をつけた。
◆本日は、Williamsサンフランシスコ連銀総裁発言、英小売売上高、米新規失業保険申請件数、米中古住宅販売件数、米フィラデルフィア連銀製造業サーベイなどの経済指標やイベントのほか、最近不確実性が高まっている中国株価および人民元基準値にも注意する必要がある。
◆ドル/円は、8月入り後に概ね下値となっていた124円丁度を割り込んだかたちとなっている中で、中国景気減速懸念や資源安からくる米利上げ先送りリスク・ドル安や、中国発の世界株安を受けたリスク回避的な円買戻しの方が大きくなりそうだ。
◆中国関連では、主要通貨では豪ドル、NZドルの方が素直に反応しそうで、特にここ数日は元安・中国株安の場合に豪ドル、NZドルが下落する傾向がある。
昨日までの世界:インフレ伸び悩みでドル安
ドル/円は、アジア時間は中国株安を眺め124円台前半で軟調に推移したが、124円台は維持、その後発表の米コアCPIは前月比で+0.1%と市場予想を下回ったが前年比では+1.8%で予想通り前月の伸びを維持したことから、ドル安は一時的に留まった。もっとも、その後は米国の予想外の在庫増などを受けた原油価格の大幅下落もあって米株価が大きく下落して始まると、米利回りも低下に向かい、更にFOMC議事要旨内容がハト派的と受け止められ大きく下落、一時123.69円の安値をつけた。
FOMC議事要旨では、引き締めに近づきつつあるとの認識を示した一方で、労働市場のスラック縮小にも拘らず全般的な賃金上昇に繋がっておらず、賃金上昇加速の時期や物価加速への波及についてかなりの不確実性が残るとされるなど、インフレ低迷についての議論が目立ったことから、9月利上げ開始シナリオの不確実性が若干高まった。
ユーロ/ドルは、欧州時間にかけては1.10ドル台半ばを挟んで上下する展開だったが、FOMC議事要旨を受けたドル安に押し上げられ、一時1.1134ドルの高値をつけた。
ユーロ/円もユーロ/ドルと同様に、137円台前半から一時137.85円へ上昇し、前日の下落分をほぼ全て取り返したかたちとなった。
豪ドル/米ドルは上下に大きく振れる展開となった。アジア時間は、中国株価が一時大幅続落となったことから0.7314ドルへ下落した後、引けにかけては中国株価が急反発したことから0.73ドル台半ばへ反発した。NY時間にかけては、原油価格が大きく下落したことなどから再度下落し0.7312ドルへ大幅反落したが、FOMC議事要旨後の米ドル安により大幅反発し、一時0.7375ドルの高値をつけた。
豪ドル/円も豪ドルとほぼ同様の上下動となったが、円高基調が重石となり、91円台前半から一時90.74円へ下落するなどどちらかというと軟調な動きとなった。
きょうの高慢な偏見:アジア時間は中華思想(中国中心)
ドル/円は、8月入り後に概ね下値となっていた124円丁度を割り込んだかたちとなっている中で、人民元基準値が再び元安方向に振れた場合の円つれ安よりも、中国景気減速懸念や資源安からくる米利上げ先送りリスク・ドル安や、中国発の世界株安を受けたリスク回避的な円買戻しの方が大きくなりそうだ。
なお、米利上げを巡っては、昨日のFOMC議事要旨もあってインフレ指標への注目度が高まっているため本日の指標(新規失業保険申請件数、フィラデルフィア連銀サーベイ)が多少市場予想を上回ってもドル高には繋がりそうにない一方、Williamsサンフランシスコ連銀総裁発言(投票権あり)は注目されるかもしれない。Williams総裁は7月15日までの発言では9月の利上げ開始と年内2回の利上げを想定していた。これはFedの中でもタカ派的な姿勢であるため、変化するとすればハト派方向で、9月利上げの先送りが示唆される場合は、米利回り低下とドル安に繋がりそうだ。一方、年内2回利上げの必要性を繰り返すようであればドル下支えとなる。
ユーロ/ドルは引き続き1.08-1.12ドルのレンジ内で方向感がないが、中国株式・為替市場の動揺が再び大きくなる場合には、避難通貨として相対的にユーロが買われ強含みとなるかもしれない。
豪ドル/米ドルは、中国関連材料に素直に反応しそうで、特にここ数日は元安・中国株安の場合に、銅や原油といったコモディティ価格の下落を通じて豪ドル、NZドルが下落する傾向がある。
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