<ポイント>
◆昨日は、中国株価が8%超の大幅下落となる中で混乱が世界的に伝播し、世界の金融市場でメルトダウン的状況となった。主要国株価は軒並み4%超下落、原油や銅などコモディティ価格も大幅に下落する中で、為替市場ではNZドル、豪ドルなどのコモディティ通貨が5%超下落、対価として円とユーロが上昇し円は全面高となっている。新興国通貨も下落したが、これまでの下落が大きかっただけに昨日の対ドルでの下落は比較的小幅に留まった。
◆ドル/円は122円で始まった後、NY時間にかけて120円を割り込むと下落が加速、一時116.18円の安値をつけた。引けにかけて一時119円台を回復したが上値は重い推移となっている。
◆本日は、中国株安とその他世界株価の下落が続く場合には、ドル/円が再び117円台へ、豪ドル/米ドルは0.71ドル台への軟化リスクがある一方、ユーロ/ドルは上昇が続きそうだ。
◆相場反転のきっかけとして最も効果的なのは、震源地である中国が景気減速懸念払拭のために金融緩和・財政刺激策を発表し、合わせてG20諸国が過度な変動を懸念し必要な対策を取る、という一致団結した姿勢を示すことだが、迅速な対応が行われるかは不透明だ。
◆本日の材料としては、ドイツIfo景況感指数(107.6へ小幅悪化予想)、米S&Pケースシラー住宅価格(前年比+5.1%へ上昇加速予想)、米新築住宅販売(51.0万件へ増加予想)、米消費者信頼感(93.4へ改善予想)などがあるが、世界的な金融市場の動揺の継続如何が焦点となる中で指標への反応は限定的だろう。
昨日までの世界:メルトダウン
ドル/円は、中国株価が8%超の大幅下落となる中で混乱が世界的に伝播し、世界の金融市場でメルトダウン的状況となった。主要国株価は軒並み4%超下落、原油や銅などコモディティ価格も大幅に下落する中で、122円で始まった後、NY時間にかけて米中長期債利回りの低下と共に120円を割り込むと下落が加速、一時116.18円の安値をつけた。その後、米株価や米利回りの小反発を受けて一時119円台を回復したが上値は重く、再び118円へ反落して引けている。
6月初に125.86円で高値をつけた後円安は止まっていたにも拘らず維持されていた円ショートポジションが巻き戻しを迫られたかたちだが、世界的な金融市場の混乱や資源安を受けたインフレ低下を受けて、米国の9月利上げ開始の可能性が大幅に後退したことも、対主要通貨でのドル安の背景にある。
ユーロ/ドルもドル/円と同様にドル安が進行し、NY時間にかけて1.15ドルを上抜けすると上昇が加速、一時1.1714ドルへ急上昇した。但し引けにかけては米利回りの反発などから1.15ドル台へ反落した。
ユーロ/円は、対ドルでユーロよりも円の上昇の方が大きかったことから下落方向となり、138円台後半からNY時間にかけて一時136.03円の安値をつけた。引けにかけては137円台を回復した。
豪ドル/米ドルは中国株安やコモディティ価格の下落と共に下落し、0.73ドル近辺からNY時間にかけて0.72ドルを割り込むと下落が加速し、一時0.7050ドルをつけた。その後すぐに0.72ドルを回復したが、原油や銅などコモディティ価格は下落基調が続く中で再度下落方向となり、早朝にかけて0.71ドル台前半へ下落している。
豪ドル/円は、米ドル/円の下落と豪ドル/米ドルの下落の両方が効くかたちで大幅に下落、89円丁度前後から一時82.10円へ下落した。その後一時86円台を回復したが再び軟化し、84円台での推移となっている。
きょうの高慢な偏見:中国景気対策プラスG20協調声明がベストだが
ドル/円は、一時116円台へ急落したことで1月16日の年初来安値(115.86円)に迫った。昨日のような急落は繰り返されそうにはないが、中国株安とその他世界株価の下落が続く場合には、再び117円台への軟化リスクがある。相場反転のきっかけとして最も効果的なのは、震源地である中国が景気減速懸念払拭のために金融緩和・財政刺激策を発表し、合わせてG20諸国が過度な変動を懸念し必要な対策を取る、という一致団結した姿勢を示すことで、こうした対策が出れば市場の過度の不安心理を沈静化し、株や商品の売り仕掛けが一服する可能性がある。但し中国が景気対策を発表するかは不透明で、かつG20諸国が一致団結して迅速に声明を出すのも困難かもしれない。次善策としてはG7諸国の声明だが、震源地の中国が含まれないため不十分だ。日本からはこれだけの株安円高は政権支持率にも影響を与える可能性があることから、追加緩和などを匂わす発言が出てきそうだが、日本だけの「口先介入」では株安円高対策として更に不十分だ。
ユーロ/ドルも、中国株安などが継続するようだと再び1.17ドル方向への上昇が続きそうだ。但し、本日はユーロ圏財務相会合(15:30)およびConstancio・ECB副総裁発言(19:40)が予定されており、ユーロ急上昇に対する懸念と金融政策による対応の可能性が示され、ユーロが反落するリスクがあり注意が必要だ。その場合、ドル下落の受け皿は円高に集中することになる。
豪ドル/米ドルも、中国株安やコモディティ価格安が継続するようだと再び0.71ドル方向への下落となりそうだ。また、人民元基準相場の元安誘導にも注意が必要で、豪ドルなどの更なる下落要因となる。資源価格については価格カルテル(OPEC)がある原油でさえ供給者側の協調が困難なほか、豪州当局は(背景にある資源安は懸念材料だが)豪ドル安自体は歓迎しているはずで、豪ドルを初めとするコモディティ通貨は下落への障害が少ない。
(※)印刷用PDFはこちらよりダウンロードいただけます。