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◆先週金曜は、米雇用統計後にドル/円やユーロ/ドルは上下に振れ方向感が定まらなかった一方、豪ドルやNZドルなどが対米ドルで大きく下落したのが特徴的だった。また、発表後ほどなくしてブラジルレアルなどの新興国通貨の下落や米株安も明確となったことから、リスク回避的な動きが広がった。
◆米雇用統計は、8月分の非農業部門雇用者数こそ+17.3万人と市場予想を下回ったが、過去計数が合計で4.4万人分上方修正され予想比下振れ分をほぼカバーしたこと、失業率は5.1%へ予想以上に低下、平均時給も前年比+2.2%と市場予想を上回るなど、全体としてはまずまずの結果で、米ドルの対豪ドルや新興国通貨での上昇や米株安、および米2年債利回りの小幅上昇はそうした認識を反映している。
◆ドル/円は、再開した香港株式市場や本邦株価が大きく下落したことから、欧州時間にかけて120円丁度近辺から119円割れへ大きく下落した。米雇用統計発表後はその評価を巡り上下したが、NY時間は米株安や米中長期債利回りの反落もあって軟調となり、119円丁度前後で引けた。
◆本日は、米国が休場で重要経済指標発表も殆どないことから、2連休明けの中国株式市場動向を眺めた展開となりそうだ。中国当局による押上げがあっても、不安定な状況が続けば市場心理は改善せず、ドル/円や豪ドルには下押し圧力がかかり続けそうだ。他方、中国株価が自然なかたちで反発に向かう場合には、まずまずの米雇用統計を再評価する動きとなり、ドル/円は119円台を回復しそうだ。
昨日までの世界:21時29分の豪ドル/円のショートが奏功
ドル/円は、再開した香港株式市場(特に香港に上場している中国企業の株価指数であるH株指数など)や本邦株価が大きく下落したことから、欧州時間にかけて120円丁度近辺から119円割れへ大きく下落した。米雇用統計発表後は、内容がまちまちであったことから評価が定まらず上下したが、NY時間は米株安や米中長期債利回りの反落もあって軟調となり、119円丁度前後で引けた。
米雇用統計は、8月分の非農業部門雇用者数こそ+17.3万人と市場予想を下回ったが、過去計数が合計で4.4万人分上方修正され予想比下振れ分をほぼカバーしたこと、失業率は5.1%へ予想以上に低下、平均時給も前年比+2.2%と市場予想を上回るなど、全体としてはまずまずの結果で、米ドルの対豪ドルや新興国通貨での上昇や米株安、および米2年債利回りの小幅上昇はそうした認識を反映している。
ユーロ/ドルは、前日のECB政策理事会後の下落が大きかったことから、アジア時間は1.11ドル台前半で小動きだった。米雇用統計発表後は評価が定まらず上下したが、どちらかというとドル高となり一時1.11ドル割れとなった。但しNY時間引けにかけては、米株安や米利回り低下を受けたドル反落により、1.11ドル台半ばへ反発した。
ユーロ/円は、ドル/円の軟調につれた動きとなり、133円台半ばからNY時間にかけて下落し132.23円の安値をつけた。
豪ドル/米ドルは、豪ドル/円と同様に香港株式市場の軟調などを眺め0.70ドル割れへ下落し、9月2日の直近安値である0.6982ドルを下回り年初来安値を更新していた。その後、米雇用統計は下落が加速し、引けにかけて0.6908ドルの安値を付けた。
豪ドル/円は、アジア時間に米ドル/円の下落と共に84円台から83円割れへ下落、米雇用統計発表後は豪ドル/米ドルの下落が大きかったことから続落し、82.12円の安値をつけた。4日付当レポートでは、豪ドル/円は米雇用統計が市場予想対比で上下いずれでも小幅な乖離に留まれば動きにくい一方、大きく乖離すれば強弱どちらの場合でも大きく下落し易い、との見通しを立てた。実際の雇用統計結果はどちらかというとやや強い内容で、豪ドル/米ドルの下落は想定通りだったが、米ドル/円が上昇しなかったこと、および市場のリスク回避的傾向が強かったことが、豪ドル/円の大幅下落に繋がったようだ。
きょうの高慢な偏見:ドル/円の反発には米金利より米株価が重要
ドル/円は、米国が休場で重要経済指標発表も殆どないことから、2連休明けの中国株式市場動向を眺めた展開となりそうだ。中国当局による押上げがあっても、不安定な状況が続けば市場心理は改善せず、ドル/円や豪ドルには下押し圧力がかかり続けそうだ。他方、中国株価が自然なかたちで反発に向かう場合には、まずまずの米雇用統計を再評価する動きとなり、ドル/円は119円台を回復しそうだ。
ドル/円を巡る市場環境をみておくと、足許は米日2年債利回り格差との乖離が大きくなっている(下図を参照)。米2年債利回りは高止まっており、米利上げ期待が根強く上昇余地が小さいことを示唆する一方、8月半ば以降のドル/円の下落は米株安と連動性が高くなっており(下図を参照)、リスク回避の高まりを受けた円ショート巻き戻しの側面が大きいことを示唆している。実際、IMM投機筋の円ショートポジションは先週火曜時点で既にほぼニュートラル水準へ縮小してきている(下図を参照)。このため、円ショート再造成余地が大きくなっている中で、米株価の持ち直しがそのきっかけとなりそうだ。
なお、週末のG20財務相・中銀総裁会合の声明(コミュニケ)には金融市場に対して影響のあるメッセージは含まれなかった。引き続き、最近の市場の動揺の一因とみられる中国景気減速懸念に対して、中国当局が断固たる措置を取るかが最も重要で、それがなければ不安定な状況が続きそうだ。
ユーロ/ドルは、中国株安がユーロ買い圧力となる一方で、ECBによる追加緩和への警戒がユーロの上値を抑えるかたちとなることから、方向感が出にくくなっている。
豪ドル/米ドルは、下落基調が強まる中、中国株価やコモディティ価格の下落に反応しやすい状況が続いているとみられる。IMM投機筋の豪ドルポジションをみると(下図を参照)、既に豪ドルショートがある程度造成されているものの、極端な水準とはなっていない。
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