<ポイント>
◆昨日は、中国株価が大きく上昇したこと、中国輸入統計は大幅に落ち込んだが逆に当局の政策期待に繋がったこと、などから原油価格や欧米株価が大きく持ち直したため、豪ドル、NZドルや南アランドといったこれまで大きく売られてきた通貨の買戻しが大きかった。
◆こうした中、ドル/円相場も中国株価が引け(16:00)にかけて大きく上昇したことから、ちょうど欧州勢の参入するタイミングだったこともあり大きく上昇に向かい、119円丁度近辺から一気に120.23円へ上昇し高値をつけた。ただしその後欧米時間中は欧米株高や米中長期債利回りの上昇にも拘らず伸び悩み、119円台後半へ小反落して引けている。
◆本日は、豪住宅ローン統計(10:30)、Lowe・RBA副総裁発言(11:00)、英鉱工業生産(17:30)、Debelle・RBA総裁補(金融市場担当)発言(18:00)、カナダ中銀金融政策決定(23:00)、Praet・ECB理事発言(0:30)、そして翌朝にRBNZ金融政策決定(6:00)が予定されている。
◆中国をはじめとする世界株価の反発が続くようだと豪ドルやドル/円の下支えとなるが、カナダ中銀が予想外に利下げする可能性が僅かながらあるほか、RBNZが市場予想の25bps利下げに加えて今後の追加緩和継続を示唆する場合は、カナダドル、NZドルの下落につれて豪ドルも再び下落に向かう可能性がある。
◆ドル/円は日米材料が少ない中で、中国株価の続伸は下支え要因だが、来週のFOMCを控えて積極的にポジションを傾けにくいとみられ、120円丁度を挟んだ方向感のない展開が続きそうだ。
昨日までの世界:中国の悪材料で買い、の政策催促相場
ドル/円は、中国貿易統計で輸入が前年比-13.8%と予想以上のマイナス幅となったことから中国景気減速懸念が高まり、一時118.86円へ軟化する局面がみられた。もっとも、中国株価が引け(16:00)にかけて大きく上昇したことから、ちょうど欧州勢の参入するタイミングだったこともあり大きく上昇に向かい、119円丁度近辺から一気に120.23円へ上昇し高値をつけた。また、三井住友海上火災による英損保会社アムリンの買収報道(6350億円)を受けて、ポンド買い円売りフローが発生するとの思惑もドル/円の追加的な押上げ要因になったと見られる。ただしその後欧米時間中は欧米株高や米中長期債利回りの上昇にも拘らず伸び悩み、119円台後半へ小反落して引けている。
なお、本邦2QGDP改定値は前期比年率で-1.2%と速報の-1.6%および市場予想の-1.8%をも上回ったが、予想外の上方修正の主因が在庫のプラス寄与度拡大で、むしろ悪い内容として受け止められた。ただし日銀の追加緩和期待は大きく変化せず、円相場への影響も殆どみられなかった。
ユーロ/ドルは特段の個別材料なく上下する展開となり、東京時間午後に1.11ドル台半ばから1.1230ドルへ急進し、先週3日のECB政策理事会を受けて急落する前の水準をほぼ回復する局面がみられた。その後欧州時間には上昇分全てが帳消しとなったが、NY時間引けにかけては反発し、1.12ドル丁度近辺で引けている。ECBから追加緩和方針に関する追加材料が出てこない中で、ユーロ買戻しが優勢となり易くなっているようだ。
ユーロ/円も、中国輸入統計発表後に一時133円丁度を割り込む局面も見られたが、その後欧州時間入りにかけて急進し134円台乗せとなった。欧米時間には一時134円を割り込んだが、引けにかけて再度上昇に向かい、134円台半ばで引けている。
豪ドル/米ドルは、豪NAB企業景況感が前月の6から11へ改善したこと(ただし企業信頼感は4から1へ悪化)、中国株価が引けにかけて大きく上昇したこと、中国輸入統計は大幅に落ち込んだが逆に当局の政策期待に繋がったこと、などから原油価格や欧米株価が大きく持ち直したため、これまで大きく売られてきたNZドルや南アランドなどのコモディティ通貨と共にほぼ一本調子で上昇、0.69ドル台前半から一時0.7040ドルの高値をつけた。
豪ドル/円も、アジア時間は82円台後半で推移したあと、欧州時間入り以降に急上昇し、NY時間にかけて84.42円の高値をつけた。
きょうの高慢な偏見:ルーニーとキウィはどこまでハトか?[1]
ドル/円は、日米材料が少ない中で、中国株価の続伸は下支え要因だが、来週のFOMCを控えて積極的にポジションを傾けにくいとみられ、120円丁度を挟んだ方向感のない展開が続きそうだ。
ユーロ/ドルはECB理事会後に大きく下落した後の買戻しが続いたが、既に理事会前の水準に近くなっており、上値は限定的となりそうだ。Praet・ECB理事から追加緩和に関する発言が出ないかにも注意する必要があり、どちらかというと反落リスクが大きいと見られる。
豪ドル/米ドル関連では、豪住宅ローン統計(10:30)、Lowe・RBA副総裁発言(11:00)、Debelle・RBA総裁補(金融市場担当)発言(18:00)などのほか、豪州と類似した資源国の中銀であるカナダ中銀(23:00)およびRBNZ金融政策決定(翌朝6:00)が予定されている。中国株価の反発が続くようだと豪ドルの下支え要因となるが、本日は比較的連動性が高いカナダドルやNZドルの方向性を決めるカナダ中銀とRBNZの決定の影響も受け易くなりそうだ。原油などコモディティ価格の下落が続く中でカナダ中銀が予想外に利下げする場合や、RBNZが市場予想の25bps利下げに加えて今後の追加緩和継続を示唆する場合は、カナダドル、NZドルの下落につれて豪ドルも下落しそうだ。
逆に、カナダ中銀が政策金利を据え置き将来の追加利下げの可能性を示さない場合や、RBNZも今後の追加利下げが小幅になる可能性を示唆する場合は、豪ドルもつれて反発する可能性がある。
カナダ中銀については、政策金利0.50%での据え置きが大勢の見通しで、ごく一部に25bps利下げ予想がある状況だ。このため、据え置きでもあまりカナダドル高にはなりにくい一方、前回7月15日以降下落している原油価格などを踏まえて予防的な利下げを行う場合にはサプライズでカナダドル安となりそうだ。
RBNZについては、政策金利(OCR)の3.00%から2.75%への引き下げがコンセンサスで織り込み済みとなっている。このため、焦点は声明文およびWheeler総裁会見(6:05~)で今後の追加緩和の必要性をどの程度示すか、および声明文におけるNZドルに関する記述が焦点となる。前回7月23日もRBNZは市場予想通り25bpsの利下げを行ったものの、Wheeler総裁が「若干の追加緩和を行う可能性が強そうだ」と発言、市場が想定していたほどの積極的な追加緩和姿勢を示さなかったことからNZドルは反発した。現在市場では来年3月末までに25bpsの追加緩和を予想しており、今回は年内の追加緩和を示唆するようだとNZドル売り、年内の追加緩和が示唆されないようだとNZドル買いとなりそうだ。
NZドルに関する記述は、前回会合以降のNZドル安を踏まえると、前回の「輸出コモディティ価格の軟調を踏まえれば、更なるNZドル安が必要」という表現が更に強められる可能性は低そうで、むしろこの表現が削除されNZドルが上昇するリスクにも注意する必要がある。
[1]ルーニーはアビという鳥で、カナダドルの俗称。キウィはニュージーランドに生息する飛べない鳥で、NZドルの俗称。
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