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◆昨日は、日米の金融政策決定を控えて全般的に小動きの展開となった。ドル/円は世界的な株価の軟調の中でじり安となり、NY時間に一時119.85円と120円を割り込んだ。
◆豪ドルはアジア時間に0.71ドルを回復した後、中国株安や豪与党自由党の党首選を巡る不透明感もあって反落したが、欧米時間には反発し、0.71ドル台半ばへ上昇した。
◆本日は、豪RBA議事要旨(10:30)、日銀金融政策決定(発表時刻未定)および黒田総裁記者会見(15:30)、英8月CPI(17:30)、ドイツ9月ZEW期待指数(18:00)、米8月小売売上高および米9月NY連銀製造業景況指数(いずれも21:30)、米8月鉱工業生産(22:15)など比較的重要イベントが多いが、米FOMC結果発表を17日に控えている中で、米国の個別経済指標には反応しにくく、日銀決定会合と英CPIの方が相場を動かしそうだ。
◆ドル/円は、山本議員発言などで追加緩和期待が俄かに高まる中、今回は見送られる可能性が高く、会合結果発表後および黒田総裁会見後の円高リスクに注意する必要がある。
◆英国では景気好調から利上げ開始に向かう中、BoEがインフレ率の重要性を指摘していることからCPIへの注目度が高まっており、前年比で市場予想(ゼロ%)を下回り再びマイナスに陥ると、英国の利上げ期待後退からポンドが売られるリスクがある。
昨日までの世界:Turnbull次期首相で豪ドルにブル転(turn bull)?
ドル/円は、日米の金融政策決定を控えて全般的に小動きの展開だったが、世界的な株価の軟調の中でじり安となり、NY時間に一時119.85円と120円を割り込んだ。
ユーロ/ドルは、欧米時間にかけて軟調となり、1.13ドル台半ばから一時1.13ドル割れとなった。途中、ユーロ圏7月鉱工業生産が発表され、前月比+0.6%と市場予想の倍の伸びとなり過去計数も上方修正されたが、市場の反応は殆どみられなかった。
ユーロ/円は、ドル/円とユーロ/ドルの両方の下落を受けて、東京時間に一時137円台に乗せた後は135円台半ばへの大幅反落となった。
豪ドル/米ドルは、アジア時間に0.71ドルを回復した後、中国株安や豪与党自由党の党首選を巡る不透明感もあって反落したが、欧米時間には反発し、0.71ドル台半ばへ上昇した。
豪州では昨日、与党自由党で党首選が急きょ行われ、豪州景気低迷の中で支持率が低下していたAbbott前首相に対してTurnbull通信相が勝利し、次期首相となることが決まった。党首選に向けては一時的に政局不透明感が高まったが、Turnbull新首相の下で景気浮揚に向けた期待感が高まった可能性がある。また、首相交代に伴うHockey豪財務長官更迭の可能性も、景気回復期待に繋がったようだ。もっとも、Turnbull新首相の政策内容は未知数で、期待感がいつまで続くかは政策内容と実行力次第となりそうだ。
豪ドル/円は、方向感のない展開となり、アジア時間に一時86円台に乗せた後、欧州時間にかけて85円割れへ反落したが、NY時間にかけては85円台後半へ小反発、結局先週末以降85円台半ばを挟んだ横ばいとなっている。
きょうの高慢な偏見:先送り症候群その1(日本)
ドル/円は、米FOMC結果発表を17日に控えている中で、米国の個別経済指標には反応しにくく、日銀決定会合が焦点となりそうだ。先週の山本議員発言などで追加緩和期待が俄かに高まっているが、今回は見送られる可能性が高く、会合結果発表後および黒田総裁会見後の円高リスクに注意する必要がある。
今回追加緩和決定を正当化する材料としては、①本邦GDPが4-6月期だけでなく7-9月期もマイナスとなるリスクが高まっている、②原油安の影響もあってインフレ率2%目標達成が後ずれするリスクも高まっている、③8月後半以降の株安円高で、金融条件がタイト化してしまっている、などが挙げられる。
他方で、今回見送るロジックとしては、①今回追加緩和した後、7--9月期GDPがプラスとなり4-6月期のマイナス成長からの明確な回復が確認されるチャンスが残っている、②政府・日銀はエネルギーを除いたインフレ率を重視し始めており、コアCPI(除く生鮮食品)の早期2%達成をもはや目標としていない可能性がある、③日銀がFOMC前に追加緩和をしても、FOMCの結果次第でその効果(円安株高など)がすぐに帳消しとなってしまうリスクがある、④逆に、FOMCの結果次第で円安・株高となり、日銀が追加緩和を行わなくても済む可能性もあること、などが考えられる。
因みに、月2回会合が開催される4月、10月以外の月における結果発表時刻(09年以降の平均、中央値)をみると、政策変更なしの場合は12:18分前後、政策変更ありの場合は13:00前後の発表となる傾向がある。
ユーロ/ドルは、米FOMCを控えて動意の薄い展開となりそうだ。ドイツZEW期待指数の更なる悪化が予想されており、これ自体はECB追加緩和期待を強めユーロ安要因だが、これまでもドイツZEW悪化継続に対する市場の反応はあまり敏感でなく、かつFOMCを前に積極的なポジションを傾けにくいため、材料とはならなそうだ。
豪ドル/米ドルもユーロ/ドルと同様、動意薄の展開となりそうだ。但し中国株価動向と、中国当局の政策対応の可能性については留意する必要がある。なお、本日発表予定のRBA議事要旨では、目先の金融政策に関して目新しい材料は出ないとみられている。
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