<ポイント>
◆昨日は、米コアCPIの予想比下振れや原油などコモディティ価格の上昇を背景に、ドルが対主要通貨で全般的に下落した。唯一の例外がドル/円で、米利回りの続伸や格付機関S&Pによる本邦ソブリン格付けの引下げの影響もあってか、120円台の半ばで強含み推移となった。
◆主要通貨の中で最も上昇したのがポンドで、英7月週平均賃金が前年比+2.9%と前月および市場予想を大きく上回ったほか、Carney総裁はじめ複数のBoE高官のタカ派発言もあったことから、早期利上げ期待が再燃した。
◆本日は、本邦8月通関貿易収支(8:50)、黒田日銀総裁発言(15:35)、スイス中銀金融政策決定(16:30)、英8月小売売上高(17:30)、米8月住宅着工および建設許可件数(21:30)、米新規失業保険申請件数(21:30)、米9月フィラデルフィア連銀製造業サーベイ(23:00)そして米FOMC金融政策決定(3:00)およびYellen議長記者会見(3:30)が予定されているが、中ではやはりFOMC結果が重要となる(FOMC結果と為替相場については投資戦略テーマ「FOMC:リフトオフ対リスクオフ」を参照)
◆今回FOMCでの利上げの有無について市場では見方が割れているとみられることから、イニシャルリアクションとしては利上げをすればドル買い、見送ればドル売りという素直な反応となるはずだ。もっとも、米2年債利回りやドル/円はFOMCを前に既に上昇したこと、また利上げをしても次回以降の利上げペースは非常にゆっくりとしたものとなる可能性が高いためドル上昇は限定的となりそうだ。他方、今回見送りの場合でも、利上げは次回10月あるいは12月に先送りされるだけでなくなる訳ではないため、ドル安も限定的となりそうだ。
昨日までの世界:米国のローフレーション、但しドル/円と米利回りはしぶとい
ドル/円は、前日の大幅反発のあと東京時間は小反落基調となり、120円台前半で軟調推移となった。もっとも、その後は中国株価の大幅反発や米利回りの続伸などから反発に向かった。格付機関S&Pによる本邦ソブリン格付けの引下げも、追加的な円安圧力になった可能性がある。その後、米コアCPIが前年比+1.8%と予想を下回り前月と同じ伸び率に留まったことから米利回りは反落したが、ドル/円の下落は限定的で、むしろNY時間引けにかけては米株高や米利回り回復もあって120円台半ばを維持した。
ユーロ/ドルは、欧州時間にかけて中国株価の上昇が嫌気されたためか下落基調となり、一時1.1214ドルの安値をつけた。もっとも、その後は米コアCPIの予想比下振れを受けたドル安に押し上げられ、一時1.13ドル台を回復した。
ユーロ/円も、欧州時間にかけて135円台前半へ軟化する局面があったが、NY時間には急反発し、一時136.64円へ上昇した。
豪ドル/米ドルは、中国株価が引けにかけて大きく上昇したこと、米コアCPIの予想比下振れを受けた米ドル安、そして原油などコモディティ価格の上昇などから上昇基調となり、0.71ドル台前半から一時0.72ドル丁度へ上昇した。
豪ドル/円も同様に、85円台後半からNY時間にかけて上昇し、86.84円の高値をつけた。
きょうの高慢な偏見:先送り症候群その2(米国)?
ドル/円は、米経済指標が複数発表予定となっているがその後のFOMC結果に影響を与えない可能性が高いことから注目度は低く、やはりFOMC結果を受けたドルの動きをイメージしておく必要がある。個人的には、世界的な金融市場の不安定や米国のインフレ低迷の中で今回利上げを急ぐ必要性は非常に低く、12月FOMCに先送りとみている。とはいえ、市場では今回FOMCでの利上げの有無について見方が割れているとみられることから、イニシャルリアクションとしては利上げをすればドル買い、見送ればドル売りという素直な反応となるはずだ。
もっとも、米2年債利回りやドル/円はFOMCを前に既に上昇したこと、また利上げをしても次回以降の利上げペースは非常にゆっくりとしたものとなる可能性が高いこと、更に言えば現在の世界的な金融市場の不安定の中での利上げ強行はリスクオフに繋がる可能性もあること、などを踏まえるとドル/円の上昇は限定的となりそうだ。
他方、今回見送りの場合でも、利上げは次回10月あるいは12月に先送りされるだけでなくなるわけではないため、ドル安も限定的となりそうだ。先送りの場合に米国をはじめとする株式市場がどのように反応するのかは非常に不透明だが、市場安定を重視した見送りと解釈されれば株高やコモディティ高に繋がり、ドル/円を下支えする面もある。結局、どちらに転んでも大きな変動にはならない可能性も高まっている。
ユーロ/ドルもドル/円と同様にFOMCを受けたドルの動向に左右される展開となりそうだ。利上げ強行の場合にはドル高ユーロ安、見送りの場合にはドル安ユーロ高となりそうだが、ECBの追加緩和期待が燻る中で、どちらかというと見送りの場合のドル安ユーロ高余地は限定的で、利上げの場合のドル高ユーロ安の動きの方が大きくなりそうだ。
豪ドル/米ドルは、FOMCを受けた米ドルの動向だけでなく、コモディティ価格への影響にも注意する必要がある。利上げ強行の場合には米ドル高に加えてリスク回避の動きからコモディティ価格が下落圧力を受けると、豪ドルへの下落圧力は大きくなる。他方、見送りの場合には米ドル安だけでなく、コモディティ価格の上昇も手伝って、豪ドルには上昇圧力が働く。とは言え、コモディティ価格の中期的な下落基調は米利上げの有無では変化しないため、どちらかといえば豪ドルの上昇余地は限定的となりそうだ。
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